タイの首都バンコクで日系デパートの撤退が相次いだ。1992年に進出したバンコク伊勢丹が昨年8月末に、85年に開業の東急百貨店は今年1月末にそれぞれ閉店。新型コロナウイルスの悪影響はあったが、それが原因ではない。伊勢丹が撤退を表明したのは、タイ政府が非常事態宣言を出した昨年3月26日より10日も前のことだ。タイ人に話を聞くと、「30年近くも営業してきた伊勢丹が撤退するニュースは確かに驚いたが、一方で不思議なことでもない。ずっと前から客はいないし、売り場も古い感じだったから」と指摘する。

 伊勢丹が入居していた商業施設セントラル・ワールドはタイのCPグループが保有するデパートチェーンの旗艦店内の一部だ。周辺にも高級デパートや商業施設がいくつもあり、電車でも2駅からアクセスが可能で、東京で言えば銀座と渋谷が混ざったようなエリアという、この上ない立地条件だ。難があるとすれば、反政府デモが激化すると近隣にタイ警察の本部があるからか、長期にわたる座り込みが行われる傾向にあることだ。デモが最も過激化した2010年にはセントラル・ワールドは放火され、半壊状態になった。

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