設備投資や高い家賃で収支はトントン

 2016年10月の規制緩和で病院の敷地内へ調剤薬局が出店できるようになったことを受け、ドラッグストア業界でも敷地内薬局の出店が加速している。先鞭をつけたのはココカラファインで、18年4月に大阪府和泉市の市立総合医療センター、19年3月に大阪市の大阪国際がんセンターに出店。同社以外にも、スギ薬局が19年11月に名古屋大学病院(名古屋市)、キリン堂が20年10月に金沢医科大学病院(石川県内灘町)、杏林堂が今年1月に浜松医科大学附属病院(静岡県浜松市)に、それぞれ出店している。今後についても、ココカラファインが、今年4月の白十字病院(福岡市)、6月の十善会病院(長崎市)、9月の大田市立病院(島根県大田市)、来年3月の安佐市民病院(広島市)と4カ所の出店を計画しているほか、キリン堂も今秋に淀川キリスト教病院(大阪市)に出店する予定だ。

 敷地内薬局は、街中の薬局に比べ患者数が多いうえ、難病の処方が多く、処方箋単価も高いことから大きな収益が見込めそうだ。が、ココカラファインの渡辺玲1取締役ドラッグ事業本部長兼調剤事業本部長は、「そう簡単な話ではない」と否定する。理由の1つは、調剤基本料の低さだ。20年の調剤報酬改定では一般的な薬局の調剤基本料42点に対し、敷地内は9点と4分の1以下。しかも、特定の医療機関からの処方箋の集中率もそれまでの95%超から70%超に引き下げられた。また、出店コストもかかる。敷地内薬局は、患者の利用時間が集中するため、調剤の自動化機器の導入が必要で初期投資は大きくなるうえ、地代家賃も街中より割高だからだ。加えて、病院が地域の防災拠点になっている場合は、敷地内薬局も災害時の対応が求められ、発電用のソーラーパネルや電源設備なども用意しなければならない。その結果、「敷地内薬局は赤字ではないが、大きく儲かるというわけではない」(渡辺取締役)のが現状だという。

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