虫よけのブランドを統一3商品の併用を促す
「人の命を守る」を経営理念に掲げるフマキラーは、昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、除菌関連製品の増産体制をいち早く整えるとともに、新型コロナに対する同社製品の効果を業界に先駆けて実証。安心安全の提供に尽力した。今年もその姿勢を継続する方針で、大下一明社長は、「〝WITH(ウィズ)〟をスローガンに掲げ、見えないリスクへの対策を強化する」と、取り組みの推進に意欲を示す。
フマキラーが今年注力するカテゴリーの一つは害虫対策商品だ。昨年はコロナ騒動の陰に隠れた感があったが、危険害虫のもたらす脅威は引き続き高まっており、特定外来生物であるセアカゴケグモやヒアリの発見地域は拡大している。また、マダニが媒介する感染症のSFTSによる死亡例も確認されたほか、蚊が媒介するデング熱も、昨年は海外渡航者の減少で症例は減ったものの、国内感染は発生している。さらに、新型コロナの感染拡大でリモートワークや外出自粛による在宅率が高まったことを受け、家庭内の害虫対策のニーズも増大。その結果、殺虫剤市場も前年比115%の1090億円に拡大した。コロナの収束が見通せない今年も引き続き高い在宅率が続くと見られることから、この春・夏は、家周りの害虫対策商品の販売に積極的に取り組む。
中でも力を入れるのが虫よけだ。在宅の増加で換気のために窓やドアを開ける機会が増えることを想定し、プレートタイプの空間用虫よけ剤「虫よけバリアブラック」シリーズを訴求する。ベランダ用、網戸用とは別に展開していた玄関用を加え、同一ブランドとして展開することで商品の認知度を高めると同時に3種類の併用を促し、家の周りを丸ごと防虫する取り組みを広げる戦略だ。
まず、物干し竿などに吊るすタイプのベランダ用「虫よけバリアブラック 3Xパワー」は、商品のデザインを変更。外枠が白く内側のネットが黒いデザインから外枠もネットも黒色に統一した。これにより、よりスタイリッシュになると同時に太陽光の吸収力も増加。温度上昇が高まることで、有効成分の蒸散量も増加。その結果、日照のある時は、ない時に比べ、薬の効き目が2.5倍に強化された。このほか、フックを物干し竿などに固定するロック機構を付けることで、プレートが移動しにくくなる工夫も施している。
ドアに吊るすタイプの玄関用は、これまで、白とピンクのデザインの「カワイイセレクト」で展開していたが、今回、「虫よけバリアブラック 3Xパワー玄関用」に刷新。ベランダ用同様、黒のボディで太陽光の吸収力を高め、こちらも日照時の効き目を2.5倍に強化した。加えて、静音バンパーを搭載し、風でドアにプレートが当たる音の大きさを最大約70%カットしたほか、さまざまな形状のドアノブにもフィットするよう取り付け部分にも工夫を施し、使い勝手も改善した。
網戸に貼り付ける網戸用「虫よけバリアブラック アミ戸にピタッ!」は、太陽光の作用で2倍の効き目を実現。表面に取り替え時期を示すインジケーターを搭載し、適切なタイミングでの交換をサポートしている。
屋外に加え、屋内での害虫対策商品にも力を入れる。中でも需要の大きいゴキブリ対策では、据え置きタイプのゴキブリ駆除剤「ゴキファイタープロ」シリーズに、隙間対策用の新商品「ゴキファイタープロ パワフルスリム」を投入。厚さ8mmの薄型容器を採用し、ガスコンロの下など、従来型の商品がカバーできなかった狭い場所にも設置できるようにした。また、円形で360度どこからでもゴキブリが入れる設計で餌を食べる機会を増やしたほか、連結しても分割しても使える2ウェイ仕様。特にゴキブリが気になる場所は1ユニット(3個連結)、いろいろな場所に置きたい場合は分割と、状況に合わせて調節できる。効果は置いた日から1年間続き、餌を食べたゴキブリはもちろん、そのふんを食べた巣の仲間や幼虫、さらにはそのふんを食べた別のゴキブリと効果が続くため、巣ごと退治できる点も特徴だ。
在宅で調理の機会が増えれば、生ごみ周りにコバエ対策も必要になる。また、クモやアリなどの侵入対策も求められる。そうした室内に出る様々な飛ぶ虫、はう虫の対策として今期新たに投入したのが「お部屋の虫キラーワンプッシュ」だ。速効成分のトランスフルトリンと致死成分のエトフェンプロックスをダブルで配合、50種類以上の害虫駆除に優れた効果を発揮。「室内で虫を見つけたけれど、虫の種類がわからないので、どの殺虫剤を使えばいいかわからない」という声に応えた。5方向に噴射するノズルで、ワンプッシュで広範囲に薬剤が広がり、すき間に隠れた虫も逃さず退治するほか、ダニ除け効果は最大2週間続く。無煙設計なので、使う前に火災報知器や家電をカバーする必要がなく、虫を見つけた時すぐに使える。さらに、消臭効果もあるため、部屋の気になるニオイも消臭できる。
大人に向けたイカリジン虫よけを発売
こうした空間用防虫・殺虫剤に加え、肌につける虫よけ商品にも新商品を投入する。有効成分のイカリジンを採用したミストタイプの虫よけ「スキンベープミスト イカリジンプレミアム」だ。肌につける虫よけはディートを使ったものが一般的だが、ディートは12歳以下の子どもに対して1日当たりの使用制限があるほか、6カ月未満の乳児には使用できない。そのため最近は、子ども用の虫よけを中心にイカリジンを使用した商品が増えており、フマキラーでも、「天使のスキンベープ」のブランド名で子ども向けの商品を展開。2016年の発売から順調に推移し、イカリジン商品のシェアの約60%を占めるまでに成長している。また、イカリジンそのものの認知度も年々高まっており、今では虫よけ剤使用者の約3割がイカリジンを知っているという。さらに、イカリジン配合商品の購入意向調査では、約8割が、「ディートタイプに比べて価格が2倍でも買いたい」と回答したことから、フマキラーでは、「商品の特徴が伝われば、価格が高くても購入意識は高い」と判断。子どもだけでなく幅広い年齢層の使用を想定し、パッケージを刷新した「スキンベープミストイカリジンプレミアム」を発売した。動物やキャラクターの絵柄の「天使のスキンベープ」に対し、新商品は、金色のボディに白で商品名を入れたシンプルなデザインにし、香りも無香性にして、性別、年齢に関係なく利用できる商品に仕上げた。
害虫対策以外では、引き続きコロナ対策のニーズが高いことから、ウイルス・細菌対策にも注力。物品用、手指用、衣類用、マスク用などの商品を展開している「ウイルシャット」シリーズに新たに部屋の空間除菌用「アルコール除菌プレミアム ウイルシャットお部屋用1発ジェット」を加えた。ゴキブリなどの害虫対策に使われる直接噴霧タイプと同じ仕組みで、有効成分を含んだ霧が部屋の隅々まで広がり、ウイルスや細菌をまとめて除去する。有効成分のベンジルアルコールにより、幅広いウイルス・菌を99.9%除去でき、菌の増殖抑制効果は最大1カ月続く。塩素は不使用。気になるニオイの消臭効果もある。
発売時のCM大量投下で短期で認知度向上を図る
営業施策では、売り上げの早期立ち上げに取り組む。温暖化により害虫の発生時期が年々早まっていることもあり、最近は、虫よけ関連商品も比較的早い時期から需要が生まれている。そこで今年は1新した「虫よけバリア」シリーズの発売と同時にテレビCMを大量投下するほか、ラジオ、新聞、雑誌では特徴に合わせた広告宣伝を積極的に出稿する。さらに、SNSを活用した効果的な宣伝活動も行っていく。オウンドメディアの「フォーユアライフ」は〝暮らしを快適に変えるヒント〟をテーマに様々な記事を配信し、月間最大120万ページビューを超える国内でも最大規模のサイトに成長しており、これと公式ツイッターを連動させた情報発信も強化する。店頭の販促ツールには、「虫よけバリア」シリーズなど、カテゴリーごとの棚を模したボードを提供。シリーズの商品をまとめて表示することで、機能や用途の異なる商品の併用を促す計画だ。
こうした販促施策で販売力を強化するのと並行し、新商品開発の環境整備にも取り組んでいる。フマキラーでは、インドネシアとマレーシアに研究拠点を置いているが、そのうちインドネシアの研究所を昨年刷新し、製品開発の環境を向上させた。さらに、国内でも、広島県廿日市市の広島工場敷地内に新しい研究開発拠点となる「ブレーンズ・パーク」を建設中だ。4月稼働予定のこの施設は、延床面積8175㎡、瀬戸内海を臨む場所に立地する全面ガラス張りの建物。研究開発施設のほか、商品を展示するショールームや虫の飼育室なども設置、一般消費者の見学も視野に入れている。
このほか、CSR活動も引き続き積極的に取り組む。日本や感染症被害の多いアジアを中心にセミナーや特別授業を実施。感染症の正しい知識と対応方法を伝える啓もう活動にも力を入れる。さらに子どもたちの自然や生命に対する探究心向上をサポートするために、夏休みの自由研究コンテストの開催や工場見学、虫はかせの講演も継続する構え。
危険害虫から感染症まで、人々の命や暮らしを脅かすリスクが高まる中、フマキラーは引き続き開発・生産体制を強化しながら、商品提供を通じて社会の安心安全に貢献していく。