主力除菌スプレーの増産に加えニーズ対応の新商品を続々投入

 「ウイルス、細菌、アレルゲンなどの見えないリスクと戦う」。フマキラーが今年掲げる成長戦略の柱だ。同社は新型コロナウイルスの感染拡大前から、「ひとの命、ひとの暮らし、ひとを育む環境を守る」の経営理念のもと、効き目にこだわった家庭用品を開発。長年培ってきた技術力がコロナ禍で威力を発揮し、ここへ来て商品の求心力が一段と高まっている。

 この4−6月、家庭用品の牽引役となったのが感染対策で需要が高まった「アルコール除菌プレミアム ウイルシャット」と「ウイルシャット ノンアルコール除菌プレミアム」の除菌スプレー2品だ。「アルコール除菌プレミアム ウイルシャット」は従来品をリニューアルしたもの。発酵アルコールとアルカリイオン水、天然抗菌成分GSE(グレープフルーツ種子エキス)の3つの力で、アルコールだけでは効きにくいウイルス・細菌を素早く強力に除去する。もう一方の「ウイルシャット ノンアルコール除菌プレミアム」は原料全てが食品成分、かつアルコール不使用なので、子どもやペットの周りでも安心して使えるのが特徴だ。こうした高い品質が消費者に支持され、フマキラーの4−6月の家庭用品売り上げは前期比3倍という急成長を果たした。

 一方で、「除菌剤にもこの半年で新たなニーズが生まれている」と営業本部 マーケティング部の戸村彰部長は推察する。フマキラーは既存品の増産に取り組むと同時に、新需要に対応した商品をいち早く投入。2020年度下期も幅広いラインアップで消費者の困りごとを解消していく構えだ。

 この秋冬の目玉商品が、9月発売の「アルコール消毒プレミアム ウイルシャット手指用」だ。消毒の機会が増えることで消費者の間に広がっているのが、「アルコールでしっかり消毒したいが、頻繁な使用で手荒れが気になる」という声だ。元々肌が弱い人だけでなく、空気が乾燥する季節を前に潜在的な不安を抱える人は多い。そこで本商品は天然由来の発酵アルコールを使用。リン酸でpHを弱酸性にし、さらに保湿成分であるヒアルロン酸Naを配合することで手肌のことを考えた消毒剤を実現した。剤型は使い心地が良く、満遍なく塗り広げられるリキッドタイプを採用。「さらっと肌になじみ、手指の隅々にまで行きわたり、効果を発揮する。また処方の工夫により、アルコールだけでは効きにくい幅広いウイルスや細菌に対して効果が期待できる」(佐藤太一マーケティング部課次長)商品に仕上げた。

 ウイルシャットシリーズの新商品はこれだけではない。同じく9月に発売したのが、衣類用の除菌スプレー「アルコール除菌プレミアム ウイルシャット衣類用」だ。家を出る前に衣類にスプレーすれば、外出先でのウイルス・細菌の付着を24時間抑制。外出後にスプレーすれば、繊維を傷めずにウイルス・細菌を99.99%除去できる。防臭効果、帯電防止効果も備え、これ1本で衣類の見えないリスクを一掃できるオールインワンの商品だ。「外出前・帰宅後に衣類にシュッとひと吹き。家の中にウイルス・細菌を持ち込まない『新習慣』をご提案したい」(佐藤課次長)。コートやマフラーの除菌といった定番の用途のほか、レジ袋有料化で使用機会が増えているエコバッグの除菌なども訴求しながら展開を図っていく考えだ。

 衣類に輪をかけてウイルスや細菌の付着が気になる品物と言えば食品だ。フマキラーはキッチン用アルコール除菌スプレーシェアでナンバーワンを誇る知見を結集し、10月30日、食品に直接かけられるアルコールスプレー「食品用アルコール除菌フードキーパー」を発売した。菌の繁殖を抑制し、食品の傷みを防ぐことで鮮度をキープする。100%食品成分なので口に入っても安心、かつ製造工程においても厳格な衛生管理を行うことで食品衛生法にも適合した。戸村部長は、「スーパーの売り場でも特に野菜などはむき出しで並んでいるので、〝誰が触ったかわからず不安〟という消費者の声が増えている」と話す。その上で、「フードキーパーなら冷蔵庫に入れる前に直接吹きかけるだけ。水洗いでは落ちない菌も除菌できる」と力を込める。また調理済みのおかずやお弁当にもさっと使うことができる。フマキラーは他社に先駆けた専用品の開発によって、従来の除菌スプレーでは対応しにくかった場面においてもウイルス・細菌への対策を深めている。

「アレルシャット」シリーズのリニューアルを実施

 とはいえ、ウイルスや菌以外にも見えないリスクは身の周りにあふれている。花粉症の原因物質となる様々な花粉は季節を問わず飛散し、昨今ではPM2.5、黄砂などの被害も恒常化している。こうした脅威を退けるべく、フマキラーはアレルゲンを含めた対策商品「アレルシャット」シリーズのリニューアルにも取り組む。

 イオンの力でウイルスや花粉などが体内に侵入するのを防ぐ「アレルシャット イオンでブロック」では、これまでウイルス用、花粉用と分けて展開していたミストを一本化。9月から「ウイルス 花粉 イオンでブロック」として、一つでどちらにも効く商品として打ち出す。使い勝手はこれまでと変わらず、メイクの上からでもさっと吹きかけて使えるほか、アルコールフリーなので子どもや敏感肌の人も安心して使用できる。

 また大容量サイズのニーズが高まっていることから、スタンダードな160回分に加え、今回新たにたっぷり使える300回分をラインアップ。標準サイズと比べると約2倍の容量ながら価格は1.5倍程度とお買い得だ。

 さらにマスクに吹きかけることで除菌・抗菌効果が見込める「マスクでブロック」も9月にリニューアルした。マスクが花粉除けからウイルス・細菌も含めた予防習慣として定着化しつつあることを受け、パッケージの表記を「アレルシャット」から「ウイルシャット」に変更。新たな装いと訴求により、シーズンにとらわれない商品として通年展開を図る。

「新習慣」を根付かせる売り場提案

 そのほか、日々の生活において見えないけれど気になるリスクといえばニオイだ。フマキラーは靴用消臭剤として「シューズの気持ち」シリーズを展開し、カテゴリー別購買データシェアでナンバーワンを獲得しているが、この度スポーツ需要の高まりを捉えた新商品「プレミアムハイブリッド FOR SPORTS」を投入する。スポーツ時は汗の量が多くなり、悪臭の原因となるニオイ菌も繁殖しやすい。そこで本商品は速効性に優れた除菌成分を通常品の3倍、プラスイオン抗菌剤を2倍配合。さらに「ペアリング消臭」という新たな処方を採用し、足回りの強いニオイを包み込んで良い香りに変える強力消臭を実現した。ウイルス、細菌、アレルゲンに加え、日常で発生する嫌なニオイにも対応、快適な生活を脅かすあらゆる見えないリスクに備えている。

 除菌商品の売り場提案では、引き続き除菌スプレー主力2品(ウイルシャット アルコールタイプ、ノンアルタイプ)を中心に展開しながら、新商品である手指用、衣類用を固めて並べるウイルシャットシリーズの一体陳列を提案する。棚横に吊り下げて展開できるハンガー台紙なども活用しながら新商品の認知度を高め、また「新習慣」をキーワードに使用シーンを印象的に伝えるPOPも提案。新しい生活習慣に対応した商品群の訴求、定着に努める。

「この間、マスクや消毒を徹底したことにより風邪やインフルエンザの患者も激減している。コロナ対応が落ち着いた後も、こうした習慣は命の危険を守る効果があるとして残るはず。家庭用品のカテゴリーは今後も啓発と習慣づけの中で長く育てていきたい」と戸村部長は力強く語る。創業以来、長きにわたり感染症などの見えない敵と戦ってきたフマキラー。コロナ禍を契機に同社はそのカバー領域を一段と広げ、市場での存在感を高めている。