伝票のペーパーレス化を進化し非接触物流を実現
2021年、デジタル化で物流業界の働き方も大きく変わろうとしている。それを支えるのが、物流のデジタル面を推進する日本パレットレンタルの子会社・TSUNAGUTE(ツナグテ)だ。同社では出荷拠点から物流センターをクラウドサービスでつなげる「伝票電子化」(テレサデリバリー)や「バース予約」(テレサリザーブ)の各種サービスを提供。テレサデリバリーは、荷物の受け渡し時に統一伝票に記載されたQRコードをスマホアプリでスキャンすることで、伝票の受け払いを電子データとして保存・管理し共有化できる仕組みだ。すでにコープさっぽろの関連会社である北海道ロジサービスでは、この取り組みを12月から運用し、すべての商品の納品伝票のペーパーレス化を推進している。TSUNAGUTEでは伝票情報の統一化、ペーパーレス、検品の省力化をさらに進め、物流業界全体でデータを共有化した「非接触物流」の実現を目指す。
同社が非接触物流の構築を急ぐ背景に物流業界のデジタル化が遅れ、物流現場で働く人にしわ寄せがきていることがある。9月に発足した菅内閣は書面、対面主義の見直しと押印の原則廃止、そしてデジタル庁創設も打ち出し、社会全体がその流れに乗って急速に動き出した。しかし物流センターでは依然、伝票の受け渡しや検品時、入庫、荷下ろし、受付と紙を経由した多くの接触が発生。オフィス業務ではテレワークや企業間の伝票電子化が進む一方で、物流現場で働く人は新型コロナ感染リスクの高い環境下で働いている。実際、トラックドライバーの500名にアンケートしたところ、対面での作業が気になる人が全体の42%を占めた(TSUNAGUTE調べ)。その中でも接触が気になる人は、「受付時」、「伝票の受け渡し時」、「検品時」の順で多かった(下記グラフ①、グラフ②を参照。クリックで大きくなります)。
また物流現場では紙の納品伝票をドライバーから荷受け、受付とリレー形式で平均7人前後の人の手を渡っていることから、そこに業務時間が大きく費やされコストも圧迫している。実際に400人の物流センターで働く人に対して調査。その結果、月間の納品伝票枚数は中央値で2600枚、その伝票に携わる時間は217時間と業務全体の中で大きな負荷になっていることが分かった。関西大学の宮本勝浩名誉教授監修のもと試算したところ、物流業界における運送業と倉庫業の2業種に限定したが、それだけでも紙伝票の電子化による年間の経済効果は、業界全体で3533億円となることが分かった。
北海道ロジサービスが伝票電子化で生産性向上につなげる
TSUNAGUTEではこれらの課題を解決する仕組みとして、出荷拠点と入荷拠点をつなぐ納品書の電子受領のクラウドサービスを提供。ネット環境さえあればいつでも配送状況から受領書を確認し、電子帳簿保存法に対応した管理ができる。伝票の受け渡し作業を減らしたい小売業の物流センターや食品卸、医薬品卸との実証実験も実施。すでに運用を開始している小売業もある。
北海道ロジサービスでは、納品書の統一化とデータ管理による物流管理事務の効率化を目的に大塚倉庫とエバラ物流と納品伝票を対象に10月に実験した。この結果、電子受領が可能であることや業務改善向上、さらに接触回数低減によるコロナ感染対策が実証。コープさっぽろ江別センターで納品書の電子受領の運用を12月から開始した。
今回導入を支援したコープさっぽろの大見英明理事長は、「当組合では組合員満足度向上のため、品揃えの拡充に取り組んでいる。その一方で、物流現場では検品・伝票処理・管理などの工数・手間が増えている。そこで物流改善をさらに進め、現場の効率化を実現することは必要不可欠。物流DXの第一歩として、生産性向上へとつながる伝票電子化の取り組みを歓迎します」とコメントを寄せた。
テレサデリバリーの納品伝票の統一化にはすでに20社以上のメーカーと300社以上の物流事業社が参画。今後も統一化を足掛かりに標準化、ペーパーレスのデジタル化まで一気に推進を図る。TSUNAGUTEの春木屋悠人社長は、「物流は消費者に商品を届けるために欠かせない社会的インフラです。そこで働く人々を守るため、持続可能な非接触物流をSCM全体での構築をお手伝いするのが当社の企業ミッションです」と強調。デジタル社会に対応した物流業界の働き方改善を強力に後押ししていく姿勢を掲げた。
(冒頭写真は、北海道ロジサービスが運営するコープさっぽろ江別センター)