産地とつながりを深め青果売り場の季節感を強化

 食品スーパー(SM)業界を取り巻く経営環境が厳しさを増している。人口減少と消費者の節約志向によって、従来の出店に頼った規模拡大は難しくなっているのだ。それに加えて、SMでは人手不足によって人件費や物流費が高騰し、経営を圧迫している。そうした状況下で、丸和運輸機関ではSMが「コアビジネス」に集中できるようにサポート体制を整え、同社の強みである3PLソリューション「AZ-COM 7PL」(7PL)に一層磨きをかけている。

 7PLはSMに向けて開発した7つの経営支援メニューを指す。様々な課題を解決するためのサービスを展開しているが、中でも人気が高いのが集客力向上を目的としたSMと産地をつなぐ産直支援システムだ。SMにとって青果は他社との差別化の武器だ。各社とも消費者の目を引くために季節感を打ち出し、売り場の魅力を高めている。そこで同社は、SM各社を招待して北海道、山形、長野、鹿児島の4カ所の産地でツアーを実施し、産地のJAや青果卸売業とSM関係者の間を取り持っている。2013年から始まったこの取り組みはすでに13社が参加するまでに拡大している。

 また産直支援に加え、店舗から500メートル以内の農家から農産物を調達し、地域内の店舗へ輸送する調達物流(地産地消支援)も始まった。これは産直と同様、直接取引だ。取締役常務執行役員3PL食品物流統括本部長の飯原正浩氏は、「お店の周りの農家さんと組めれば、朝収穫したものをその日のうちに販売し、お店に来られるお客様はおいしくいただける。青果売り場では有名産地と地場産品の2本立てで取り組むのが大事」と指摘し、売り場強化を狙う。

 丸和運輸機関が地場産品の調達支援に取り組む背景には、地場産品が地元の市場ではなく東京の大田市場に納入されているという事情がある。地方の卸売市場の弱体化を丸和運輸機関がカバーし、農産物を運べない農家と地場産品を希望するSMの双方を支援。地産地消の支援については検証段階にあるが、「磨きをかけて皆様にご提案できるレベルに引き上げていきたい」(飯原本部長)考え。産直支援・地産地消支援で青果売り場の活性化を図り、さらなる集客力向上につなげていく。

有名産地との産直支援に加え、地場産品の調達支援にも取り組む

 さらに物流コスト支援では、物流費が高騰するSMを支えるべく、7PL支援メニューのブラッシュアップを図っている。店舗オペレーションの改善を目指し、丸和運輸機関の社員が各SMの物流課題を調査。店舗での品出しや荷受け作業を担う従業員に対して、丸和運輸機関が運営する物流センターであらかじめ仕分けた商品が店舗でスムーズに品出しできるかどうかなどについて聞き取り、改善点を洗い出して改革案を積極的に提案している。

 食品営業部長の三本浩氏は、「バックヤードの面積を十分取れないSMが増えている。このような状況の中でバックヤードの効率化が図れる配送体制や発注単位見直しの提案が好評をいただいているので全国へ広げていきたい」と力を込める。例えば、出荷情報のやりとりを紙の伝票で行っていたSMに対し、検品システムの導入を提案したところ採用され、業務改善につながった例もある。

 また物流品質では徹底した温度管理が評価され、鮮度管理が厳しいコンビニの野菜工場からベンダー工場までの輸送も受け持つなど事業領域も広がっている。

 丸和運輸機関は2020年3月期から3カ年の中期経営計画が始まった。低温食品物流においては7PLの活用で物流改革の挑戦を打ち出す。現在、高品質とわかりやすいサービスメニューにより、「丸和に話を聞いてみようという取引先様が増えている」(飯原本部長)。同社の企業文化である「お客様第一義」の姿勢で取引先のことを知り尽くし、他社にはないメニュー提案をしっかりと続けることで、厳しい競争環境にあるSMの経営改善に貢献していく構えだ。

飯原正浩取締役常務執行役員3PL事業本部長(写真右)と三本浩食品営業部長

丸和通運 「クールコンテナ」/ 徹底した温度管理でモーダルシフトを推進生鮮食品の長距離輸送に対応

 深刻なドライバー不足を受けて、トラック輸送業界を取り巻く環境も激変している。ドライバーの労働環境の改善を図るために、連続運転時間や休憩時間などを定めた規制の強化で、600km以上の長距離輸送は困難になりつつある。

 こうした背景から鉄道輸送を活用するモーダルシフトが加速しているが、貨物列車のコンテナに載せて輸送するのに生鮮食品は適していなかった。低温度帯向けに保冷コンテナがあるが、温度を一定に保つことはできないため、冷凍品や一部の生鮮品には対応していない。さらに、輸送期間が長くなると品質が下がってしまうといった難点があり、温度管理が必要な商品に最適なコンテナがなかったのだ。

 丸和運輸機関の子会社である丸和通運は鉄道コンテナでの輸送事業を展開し、温度を一定に保つ「クールコンテナ」を保有している。温度管理が必要な加工肉、冷凍食品、乳製品、青果物などの輸送に対応。クールコンテナは、これまでマイナス25−プラス25度まで設定できる「UF12Aタイプ」を51基保有してきたが、ニーズの高まりを受け、今年1月には内容積を1.5倍まで拡大した「UF16A」をさらに51基導入。2種類とも全国140カ所にある貨物駅すべてで運行可能なほか、UF16Aは沖縄でも利用できる。

丸和通運の「クールコンテナ」は温度管理が必要な加工肉、冷凍食品、乳製品、野菜などの輸送に対応している

 クールコンテナはすでに加工食品やチルドメーカーでの採用実績を積み重ねてきたが、さらにSMでの導入へと拡大。関西のSMが北海道からの輸送で月2回利用している例もあるほか、北海道のSMが鹿児島からの産直輸送で利用したところ、「鮮度が高く非常に喜ばれている」(三本部長)など関心を示す企業が増えているのだ。

 クールコンテナの需要は夏場に向けて高まるが、冬場も威力を発揮する。冬場に保冷コンテナで農産物を北海道へ輸送すると、厳しい寒さで凍結してしまい、売り物にならなくなってしまうが、クールコンテナはこうした心配はない。

 丸和通運ではモーダルシフトが進む中、鮮度の維持が絶対条件ともいえる生鮮食品の長距離輸送でクールコンテナの積極的な活用を提案していく。

この記事の購読は有料購読会員に限定されています。
まだ会員登録がお済みでない方はこちらから登録ください。
有料購読申込

すでに会員の方はこちらから