新型コロナ対策を徹底し6月から再開

 八ケ岳の雄大な自然の中でおいしく、楽しく野菜と触れ合える施設――。昨年4月に「農業」「ものづくり」「観光」の三つが一体化した体験型野菜テーマパーク「カゴメ野菜生活ファーム富士見」(長野県富士見町)が誕生した。消費者と直接コミュニケーションができるカゴメの新たなPR拠点として、カゴメの子会社のカゴメ野菜生活ファームを通じてオープンした。八ヶ岳連峰のふもとの雄大な自然の中で農業体験や収穫・調理体験、隣接するカゴメ富士見工場見学など様々な体験ができるのが特徴だ(工場見学・体験教室の予約受付は新型コロナウイルスの影響で現在休止)。

 同施設内には隣接する八ケ岳みらい菜園で栽培する生鮮トマト、地域で採れた野菜を使ったイタリアンレストラン、カゴメ商品や地域の特産品を取り揃えた直営ショップのほか、トマトの様々な品種を展示した観光温室などが揃った。昨年は約3万4000人が来場し、すでに地域の人気観光地となっている。またカゴメの取引先も昨年から数十社がすでに来場し、工場見学や収穫体験、レストランでの食事を通じて「野菜の会社、カゴメ」を実体験する場として活用されている。

八ヶ岳の雄大な自然の下で、夏場には子どもに人気のミニトマトやトウモロコシなど様々な野菜の収穫体験ができる

 ただ、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で5月まで休館し、6月中旬から定期的な空気喚起や除菌など新型コロナウイルス感染防止対策を徹底した上でレストランやショップをはじめ、野菜の収穫体験などを再開した(12月から3月までは冬季休業)。カゴメ野菜生活ファームの河津佳子社長は、「昨年、お客様と直接触れ合うことのできる体験型施設として、カゴメのものづくりのこだわりや野菜のおいしさ、楽しさをお伝えでき、お客様との絆作りができたと実感しています。コロナの影響で本格的な営業再開は6月となりましたが、心待ちにしていた、と言っていただけるリピーターの方も含めてたくさんご来場いただいています」と再開できたことの喜びを口にする。

富士見町の農業振興、雇用の創出、観光事業を促進

 同施設は「農の未来、食の未来、地域の未来を魅せる」をコンセプトに、「カゴメ野菜生活100」シリーズをはじめとする紙パックの野菜飲料を製造する富士見工場、冷涼な気候を活用しトマトや高原野菜を栽培する八ヶ岳みらい菜園、地域の観光を担うカゴメ野菜生活ファームの三者が協力して運営。総敷地面積は約21haの広大な土地だ。最先端の技術で栽培するカゴメの高リコピントマトは、施設内のレストラン・ショップで使用・販売されている。また工場の排温水や排ガス(CO₂)を菜園の温室に再使用するなど循環させることにより、環境にやさしい農業を実現している。

 この富士見工場は1968年に操業を開始し、「カゴメ野菜生活100」や「野菜1日これ1本」などの紙パックの野菜飲料を年間約5億個と世界最大規模の製造体制を構築。飲料製造には、南アルプスの豊かな水資源を使用している。河津社長は、「地域の皆さんのご理解とご協力がなければ、長きにわたり工場の操業はできなかった。そういった意味で、カゴメは富士見町に恩返しをしたかった」とその意義を語る。

 プロジェクトは2012年からスタート。富士見町と協業し、富士見工場に隣接する遊休農地の活性化に向けた取り組みでもある。「もともと水田だった約10haの土地が遊休地となっていたことから畑として蘇らせ、さらに、観光施設をつくることで、レストランやショップ、農業体験を目的にたくさんの方が訪れ、富士見町のすばらしさを実感していただくことで地域の活性化に貢献することを目指しています」(河津社長)。両者は富士見町の農業振興、自然環境保全、雇用の創出、町民の健康寿命の延伸への取り組みへの協力を目的に、16年に連携協定を締結。工場を稼働してから52年間にわたる信頼関係をもとに、構想から約6年の歳月をかけて遂に完成した施設だ。

子供の夏休みの記憶に残る野菜収穫など体験コンテンツが充実

 その体験型施設の中でも人気スポットが施設内のイタリアンレストランだ。イタリア製の薪窯で焼いた本格ピザのほか、パスタ、トマトソフトクリームなど、地場野菜をふんだんに使ったここでしか食べられない多彩なメニューを提供。また施設内のショップにはジャム4種類と「野菜生活100オリジナル 野菜生活ファーム限定パッケージ」のほか、野菜をモチーフにしたノート、マグカップ、マスキングテープなど女性目線で作られた楽しいオリジナル商品が揃っている。今年から販売を始めた限定商品のトマトジャムが人気商品だ。

レストランには本場のイタリア製の薪窯を設置
ショップではジャムや野菜飲料の限定商品を揃えている

 通常コースの80分の工場見学では、カゴメのものづくりのこだわりを畑から野菜飲料が作られるまでのプロジェクションマッピングやジオラマの見学を通じて伝える。工場では、1分間に約400パックを作る日本最高速の紙パックの充填機や、完全自動で箱詰めからフォークリフトで商品を運ぶまでの省人化の取り組みも紹介している。ただ現状、こちらは休止していることから、代わりに現在は360度のVRにより工場の生産ラインを間近に見学することができる「プチガイドツアー」を毎日施設内で実施している。

 7月、8月の夏場には、地元の小学生と一緒に種を植え、育てた広大なひまわりの迷路のほか、ミニトマトやトウモロコシなど様々な野菜の収穫体験もできる。また通常は収穫した野菜の料理体験も楽しめる。親子だけでなく、3世代のファミリーで楽しめ、子供の夏休みの記憶にも残るイベントが充実しているのが特徴だ。 「カゴメ野菜生活ファーム」はカゴメが目指す地域の農業振興の象徴的な施設に位置づけられる。長期ビジョンに「トマトの会社から野菜の会社に」を掲げるカゴメでは、食を通じて社会課題の取り組みを推進。日本の緑黄色野菜の消費量を高め、健康寿命の延伸や地域の社会課題解決の活動を進めていく。

観光音質では、天井に広がる様々なトマトの品種を展示している
通常80分の工場見学の代わりにVRを使った工場の見学会も実施している
工場見学では、ジオラマやプロジェクションマッピングで「カゴメ野菜生活100」のこだわりを紹介

<施設概要>                                     住所:長野県諏訪郡富士見町冨士見9275-1                電話:0266-78-3935                                     Mail:ysf@kagome.co.jp                         *12月1日から3月31日まで冬季休業