使い方は折るだけ扱いやすさが大きく向上

 大幸薬品は空間除菌剤「クレベリン」の業務用を強化し、HACCP制度化の対応に追われる食品事業者を支援していく。クレベリンは、二酸化塩素を放出して空気中に浮遊する菌やウイルスを除去するほか、カビの抑制やにおいを消す効果がある商品。このコロナ禍で一般用、業務用ともニーズが急激に高まっている、大幸薬品を代表するブランドだ。

 今年12月に発売予定の業務用商品「クレベリンプロ スティックくん蒸タイプ」は、1本当たり最短30分で高さ2.5m、10㎡の空間のウイルスや菌を除菌することが可能。すでに発売済みの置き型タイプは有人空間での使用を想定したのに対し、無人空間で使用する「くん蒸タイプ」は0.3ppmをターゲットとして設計している。密閉した空間に高濃度の二酸化塩素ガスが隅々まで拡散することで、短時間で浮遊ウイルスや菌などに加えて、付着したウイルスや菌も除去する。HACCPに基づいた衛生管理では次亜塩素酸ナトリウムを使用した殺菌・消毒が求められているが、「くん蒸タイプ」を併用することで、より期待できる。

12月に発売予定の「クレベリンpro スティックくん蒸タイプ」(※パッケージの外見が変わる可能性がある)

 使い方も簡単だ。スティックを折るだけで2種類の薬剤が反応し、二酸化塩素が発生する。あとは無人空間内でガスが拡散するのを待ち、その後換気をするだけで完了。ふき取り作業なども不要で、手間がかからない。大幸薬品は「くん蒸タイプ」を食品スーパー(SM)のバックヤードや食品工場、飲食店、カラオケ店などへの導入を目指す。

 大幸薬品が「くん蒸タイプ」を開発した背景には、強力な除菌を求めるニーズの高まりがある。業務用の置き型タイプは約2カ月室内に設置して使用するが、事業者によっては設置場所で換気を頻繁に行う場合もあり、除菌に必要な濃度に達するまでに時間がかかるケースがあった。

 こうした問題の解消を目指し、大幸薬品ではまず昨年、ボトル形状のくん蒸タイプを開発。が、ボトル形状では大量の薬剤の粉末を投入する手間がかかる上、薬剤が手に付着する恐れもあることから、現在のスティック形状の製品を新規開発した。利便性のさらなる向上を図っている。

スティックを折るだけでくん蒸し、室内を除菌することができる

提携企業とともに導入先に最適な使用法を提案

 では、「くん蒸タイプ」の除菌効果はどれほどあるのか。飲食店のトイレに設置して、検証を行った。天井、便座の裏表、便器外側、室内ドアノブを対象に一般生菌、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の4種類の菌数について、くん蒸前、くん蒸30分後と5時間後の菌評価を実施した。その結果、くん蒸30分後ではくん蒸前と比べて各部分で菌数は大きく減少。さらに5時間後では、いずれの場所も菌がほとんど見られず、二酸化塩素の高い除菌効果が確認できた。感染管理事業部流通開発グループの菅原徹アシスタントマネージャーは、「除菌力は濃度と時間で決まる。くん蒸時間は最低でも30分、できれば一晩置いてほしい」と長時間のくん蒸を推奨する。また高い除菌効果を評価したある食品メーカーの工場では、発売前の時点で「くん蒸タイプ」の採用を決めたという。

 使用頻度については、置き型タイプでは容量60gで約1カ月間、容量150gでは約2カ月間など使用期間を示している。一方、「くん蒸タイプ」では使用する環境で汚れ方が異なるため、くん蒸する頻度を明示していない。

 代わりに大幸薬品では、ターゲットとなる食品事業者に対し、衛生管理を熟知する企業と提携し、個別に導入提案を実施する。具体的には、衛生管理の指導をはじめ、マニュアルづくり、使い方やくん蒸する頻度を記載した張り紙の作成を行う。また、くん蒸後、菌試験を実施して菌数がくん蒸前の水準に戻る期間を検証した上で使用計画も策定する。導入先の環境に合わせた使い方提案で、よりきめ細やかなHACCP対応につなげる考えだ。

 今後、業務用としては、「クレベリンプロ」としてシリーズ化を図るほか、パッケージデザインもリニューアルで統合し、さらなる認知度の向上を図る方針だ。

食品スーパーのバックヤードや食品工場などのほか、飲食店、カラオケ店、バスなどへの導入も視野に入れる

 食中毒を起こさないために制度化されたHACCPへの対応は、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制にもつながる取り組みとして捉える業界関係者が多く、「大手SMなどからクレベリンの引き合いが増えている」(菅原アシスタントマネージャー)という。大幸薬品は、SMや飲食店、食品工場などの食品事業者に対して、衛生管理の支援を強めていく構えだ。

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