新型コロナの発生・拡大で日用品の購買行動が変化

 新型コロナウイルスのパンデミック宣言から3カ月余り。国内では緊急事態宣言が解除され、人や物の動きが徐々に戻りつつあるが、感染の第2波など不確定な要素は依然多い状況だ。こうした中、顧客満足度ナンバーワンを追求するユニ・チャームは、新型コロナで一変した消費者ニーズに向けて対応を強化。「新しい生活様式」、「ウィズ・コロナ」といったこれまでになかった価値観を踏まえ、消費者に寄り添った商品提案・売り場提案にいち早く乗り出している。

 新型コロナの発生・拡大は日用品の購買行動にも大きな変化をもたらした。1月の報道以降、消費者の感染予防・除菌ニーズが急拡大。特に目立ったのはマスク、ウェットティッシュなどの売り上げ増で、市場規模はこの2~4月でそれぞれ前年比1.3倍、1.6倍に膨らんだ。

 売れ行きが変化したのはこうした商品だけにとどまらない。生活全般における清潔ニーズの高まりに伴い、ペット用のウェットティッシュ、床拭き用のシートクリーナーなども需要が拡大。これらは元々のパイがそれほど大きいわけではないが、2~4月の市場伸長率はマスクを上回る1.4倍に達した。「一時的な買い占めが売り上げを押し上げた部分もあるが、新型コロナを経て消費者の意識そのものが大きく変わった。こまめに除菌する、身の回りを今まで以上に清潔に保つ、こうした行動が当たり前の習慣になった」(ユニ・チャーム)。

 5月4日には厚生労働省が「新しい生活様式」を発表。新型コロナへの対策が長丁場になることを前提に、生活のあらゆる場面で手洗いや消毒などの感染対策の徹底や、「3密」を避ける行動などを促すよう求めた。東京都の小池百合子知事も同月29日、長期にわたり新型コロナと共存していくという対応方針「ウィズ・コロナ」を宣言。これに伴い、今後はさらに清潔ニーズ対策・除菌関連商品の需要が拡大すると見られ、変化に対応した品揃えができるか否かで店舗の業績が大きく左右される状況が生じつつある。

 こうした環境変化を捉え、ユニ・チャームは消費者の新しい日常にいち早く着目。マスクやウェットティッシュはもちろん、清潔ニーズに対応する幅広い商品の提案強化を仕掛ける。品揃え・売り場の変更、新しい生活様式に絡めた販促などを店舗と協力して実施。販売拡大のチャンスを逃すことなく取り込む方針を打ち出している。

ペットの清潔ケアを訴求し人とペットの共生社会を実現

 ユニ・チャームの掲げる理念の一つに、「人とペットの共生社会の実現」がある。ウィズ・コロナへの対応として、今期特に力を入れるのがペットの清潔ケア商品だ。

 昨今、人口減少の影響でペット全体の飼育頭数は微減トレンドの一方、1頭にかける支出額は年々増加している。しかも新型コロナによる家ナカ充実の思考からペットと過ごす時間が増え、飼育者がペットにかける金額は直近でさらに増加しているのだ。

 在宅時間が増えたことでペットと散歩する頻度も増加傾向にあるが、外から帰ってきた時に目に見えないウイルスや菌の付着に不安をおぼえる飼育者も多くなっている。また家にいる時間が長くなったことで、今まで気づかなかったニオイに気づくなど、ペットに対する清潔意識全般が高まりつつある。ユニ・チャームの実施した調査でも、「散歩の後、ペットの体をウェットティッシュで念入りに拭くようにしている」「より除菌効果の高いウェットティッシュを使うようになった」という飼育者の声が多く寄せられたという。

 こうした需要に向け、ユニ・チャームが提案を強めるのが、ペット用ウェットティッシュの「デオクリーン」シリーズだ。ペットの体を拭く用では、豊富な水分量の「純水99%」、身の周り品の除菌までできる「ノンアルコール除菌」の2種類を用意。ペットが拭きあとを舐めても安心な上、丈夫で厚い布地でしっかり拭けることが特徴だ。またワンタッチオープンの本体ケースで展開していることも競合他社にはない利点。ペットを片手で抱えている状況でも使いやすく、詰め替えへのリレーションにもつなげやすい。買いだめ需要に向けては、お買い得な詰め替え3個パックもラインアップしている。

「デオクリーン」純水 99%ウェットティッシュ(本体)
「デオクリーン」純水 99%ウェットティッシュ(詰め替え用)
「デオクリーン」純水 99%ウェットティッシュ(詰め替え用3個パック)
「デオクリーン」ノンアルコール除菌ウェットティッシュ(本体)
「デオクリーン」ノンアルコール除菌ウェットティッシュ(詰め替え用)
「デオクリーン」ノンアルコール除菌ウェットティッシュ(詰め替え用3個パック)

 一方、オシッコ汚れ用の「おそうじウェットティッシュ」はアルコール含有タイプだ。当然こちらもペットが拭きあとを舐めても安心、かつしっかりと身の回り品の除菌ができ、気になるニオイまでケアできる仕様となっている。普通サイズと大判サイズを取り揃え、体を拭く用と同様、大容量パックも展開している。

「デオクリーン」オシッコ汚れ おそうじウェットティッシュ(普通サイズ)
「デオクリーン」オシッコ汚れ おそうじウェットティッシュ(大判サイズ)
「デオクリーン」オシッコ汚れ おそうじウェットティッシュ(普通3個パック)
「デオクリーン」オシッコ汚れ おそうじウェットティッシュ(大判2個パック)

 ユニ・チャームの担当者は、「現在は純水タイプの売り上げが圧倒的に多いが、これからは除菌タイプの需要が高まってくる」と分析。そのための売り場提案にも余念がない。実は人用のウェットティッシュにおいても、2009年のインフルエンザ流行を機にアルコール・ノンアルコール除菌タイプの市場が拡大した経緯がある。これを踏まえ、ペット用ウェットティッシュも除菌商品のゾーニング陳列を強化。ドラッグストアなどの小型店舗でも棚一段にしっかり固めて並べることで訴求を図る。

 売り場が広く取れる量販店、ホームセンターなどの大型店舗ではウェットティッシュの陳列幅自体を拡大し、ブランド・タイプ別のブロッキングをより強く打ち出す。その中で除菌商品は近接する棚2段にまとめ、新規顧客の目にも留まりやすい展開を推奨している。

 POSデータの分析によると、ペット用ウェットティッシュの購入者は、人用ウェットティッシュの併買率も圧倒的に高い。つまり人・ペットを問わず、身の回りの清潔意識が特に高い優良顧客と言える。ユニ・チャームはペットの清潔ケア商品をフックに、清潔意識が高い新規顧客を拡大、さらにはロイヤルカスタマーの醸成へとつなげていく考えだ。

ウェットシートを使った床拭き提案で「家中除菌」を打ち出す

 ユニ・チャームがウィズ・コロナの環境下で訴求を強めるもう1つのカテゴリーが、床拭き用のシートクリーナーだ。同社が掃除用品ブランド「ウェーブ」で展開するシートクリーナーおよび本体のフロアワイパーは、この10年間で市場規模がそれぞれ1.4倍、1.5倍に拡大している成長商材だ。加えて昨今は新型コロナで外出自粛やテレワークが広がり、在宅時間が増加。これが清潔意識の高まり、掃除機会の増加につながっており、短時間でこまめに家中が掃除できるシートクリーナーは大きな市場活性化が見込まれている。特に伸びが期待されているのが、アルコール含有かつ除菌効果のあるウェットシートだ。需要増の状況を捉え、今年3月には安心仕様のノンアルコール除菌タイプもラインアップに追加。ユニ・チャームはこれらを軸に、「家中除菌」のテーマの下、新しい生活様式に沿ったシートクリーナー提案を打ち出していく。

 すでに家庭内においても、ドアノブやテーブルの上など、手が触れる部分をこまめに除菌する習慣が消費者の間に根付きつつあるが、「床の除菌」にまで気を配る消費者はまだ少ない。床を含めた家中除菌の啓蒙で、今までドライシートのみを使っていた消費者に対してウェットシートとの併用を提案。またシートクリーナー自体を使ったことのない新規層に向けてトライアルを呼びかける狙いだ。

 例年の動向を見ても、春から夏にかけてのこのシーズンはウェットシートの需要が高まる傾向にある。汗をかいたり、素足で室内を移動することが増え、床のベタつきを感じる場面が多くなるからだ。さらに今後は新型コロナ対策も含めた換気の機会も増え、室内にホコリや砂が舞い込む状況も増加。需要はさらに高まると見られる。新しい生活様式に伴う動向変化とシーズン需要を漏れなく取り込むためには、夏場に向けて売り場を作り込むことが肝心だ。

 売り場構築のポイントの1つが、「ウェーブ」ブランドの一体陳列だ。現状ウェーブにおいては、床掃除用のフロアタイプよりも棚やすき間のゴミを取るハンディタイプの方が認知度が高い実情がある。店頭での売り場も分けられていることが多いが、これらをまとめて展開した方がブランド全体の認知度が高まり、併買率が向上するのだ。除菌ニーズに対しては、前述のフロアウェットシート、同 ノンアルコール除菌タイプをメインに打ち出しつつ、ハンディの抗菌ファイバー搭載ドライシートなどを合わせて提案することで新需要の開拓も期待できる。

 もう1つのポイントは、シートだけでなく、本体のフロアワイパーもきっちりセットで展開することだ。シートに比べれば圧倒的に購買頻度が少ないものの、これが売り場にあるのとないのとではトライアル需要の取り込みに大きな差が生じる。新規顧客の拡大に向け、本体も切らすことなく同時展開を保つことが重要だ。

「ウェーブ」のフロアワイパー本体
「ウェーブ」フロアウェットシート
「ウェーブ」フロアウェットシート微香タイプ
「ウェーブ」フロアウェットシートノンアルコール除菌タイプ

マスク、ウェットティッシュは商品価値の訴求と増産を続ける

 このほかユニ・チャームは、品薄が続いているマスク、人用のウェットティッシュについても工場をフル稼働して生産を続けている。

 マスクは徐々に市場全体の流通量が増えつつあり、高値でもとにかく購入するといった購買行動は沈静化、消費者の商品選別も進んでいる。ユニ・チャームは改めて「超快適」、「超立体」ブランドの品質、メイド・イン・ジャパンの安心感を打ち出すことで商品価値を訴求。併せて、生産能力の制約がある中で特に7枚入りの構成比を増やし、30枚入り、50枚入りの生産量を調整することで需給逼迫に対応。求める人の手元に商品が届く体制構築を急ピッチで進めていく。

 人用のウェットティッシュ「シルコット」シリーズにおいても、除菌タイプに比重を置いた増産が始まっている。シルコットのラインアップは幅広く、アルコール・ノンアルコール除菌、ノロクリア除菌など様々な種類があるが、中でも直近では「99.99%除菌」を謳う商品の引き合いが強まっている。今後はニーズの高い商品の優先度を上げて増産に取り組む構えだ。

 高まる清潔・除菌ニーズに沿った新提案で業界の一歩先を行くユニ・チャーム。新型コロナで変わる消費者の生活に寄り添うとともに、店頭販売の活性化で今後も市場成長の牽引役を担っていく。

(冒頭写真は「デオクリーン」純水 99%ウェットティッシュ<本体>)