全米小売大手ターゲットが、ホリデー商戦に向けてAIを活用した新機能を発表した。ギフト推薦、店内ナビゲーション、リストスキャンなどを全面的に強化し、オンラインと店内の両方で“簡単・スマート・楽しい”買い物体験を提供する。ターゲットは「家族全員がホリデーの楽しさを味わえるデジタル体験」を掲げ、アプリ中心の顧客接点強化に舵を切った。
ターゲットは、店内でターゲットアプリを利用するゲスト(顧客)の購入点数が約50%増加するというデータを持つ。チーフ・ゲスト・エクスペリエンス・オフィサー(CGEO)のカーラ・シルヴェスター氏は「ゲストの買い物体験を、よりパーソナルで直感的でつながったものにする」と語り、AIを核とした買い物支援機能の提供を強調した。
同社はアプリの価値を最大化することで、来店客の購買行動を深く理解し、店舗の売上拡大につなげる戦略を採用している。特にホリデー商戦では、新規顧客の獲得と購買頻度向上が重要であり、ターゲットはアプリを「最強の営業ツール」と位置づける。
会話型AIによるギフト提案
そして今年の目玉は、会話型AIを活用したギフト推薦機能「ターゲット・ギフト・ファインダー」である。
ゲストは贈る相手の年齢、趣味、シーンなどの情報を入力するだけで、AIが“最適な一品”を提示する。ギフト選びはホリデーシーズン特有の負担が大きい行動だが、ターゲットはこれをAIによる意思決定支援として仕組み化した。
パーソナライズは小売業界全体の潮流であるが、本機能は「消費者自身が気づいていない候補」を提示できる点で競合との差別化につながる。特に、アプリ経由のオンライン注文や店舗受け取りと連動させることで、ギフト需要の取りこぼしを防ぐ狙いがある。
手書きリストも読み込む
さらにターゲットは、手書きメモや家族のウィッシュリストをアプリで読み込める「リスト・スキャナー」を導入した。
この機能では、写真として取り込んだリストをAIが解析し、自動でショッピングカートに商品候補を追加する。ユーザーは「Myターゲット」タブ → 「リスト&フェイバリッツ」 → 「マイ・ショッピング・リスト」から利用できる。
ホリデー期は購入品目が多岐にわたり、家族ごとに管理方法が異なる。ターゲットは“管理の複雑性”を解消することで、買い忘れリスクを低減し、1人当たりの購入点数増加を促す戦略である。
店内ナビゲーションを刷新、マスコット探しゲームも
店内体験も大きく強化された。ターゲットアプリの「ストア・モード」は、ゲストが店舗に入ると自動で起動し、探している商品の棚位置を案内する。さらに、店内在庫がない場合は、アプリ上で同日配達・翌日配達などの代替受け取り方法を提示する。これにより、いわゆる“在庫切れ離脱”を減らし、顧客満足度と売上機会の最大化を図る。
ターゲットはファミリー層を中心に高い支持を得てきたが、ホリデー商戦では「楽しさ演出」にも力を入れる。アプリのストア・モードでは、ターゲットのマスコット犬“ブルズアイ”を探す店内ゲーム「ファインド・ブルズアイ」が体験でき、チェックアウト時にホリデーステッカーをもらえる(数量限定)。
さらに、アプリ利用時にはバーチャルアニメーションの“AIヘルパー”が表示され、ジョークを交えつつ操作を案内する。「買い物時間そのものをエンターテインメント化する」ことで、滞在時間の増加や店舗回遊を促す狙いが透ける。
2025年ホリデー商戦は、アマゾン・ドットコム、ウォルマート、ターゲットなど大手小売企業がAIを軸に顧客体験の最適化を競い合う展開となった。















