中国EC最大手であるアリババ・グループ・ホールディングの事業再構築が加速している。昨年11月に「アリババeコマース事業グループ」を設立して、個別に運営されていた複数のeコマース事業を統合。同12月には傘下に収めていた百貨店大手、銀泰の株式を売却すると発表した。
そして年明け早々、今度は食品スーパーなどを手がけるサンアート・リテール(高鑫零售)の株式売却を発表した。この取引は2024年12月31日に締結された売買契約(以下、SPA)に基づき進行しており、アリババグループは完全子会社を通じて間接的に保有していたサンアート株式をすべて処分することになる。
本取引により、アリババグループは発行済みサンアート株式全体の約73.66%に相当する約70億株を売却する。SPAに基づき、売却株式の対価は1株当たり1.55香港ドル(2024年中間配当0.17香港ドルを含む)。
アリババグループの推定では、この処分により株主に帰属する損失額は約131.77億人民元になるとされている(損失額は最終監査結果や処分の時期、サンアートの資産価値などにより変動)。
オムニチャネルからの大転換
アリババグループは自社株買いなどの株主還元を強化しつつ、「非コア資産」を現金化し、収益をコア事業の成長に集中させる戦略を加速している。今回のサンアート株式の売却は、アリババグループにとって重要な戦略的転換点である。コロナ前にアリババはリアル店舗を次々と買収し、リアルとネットの融合モデルづくりに努めていたからだ。
アリババグループは中国の消費市場の将来性については引き続き自信を持っているとしている。非コア資産を処分してコア事業へのリソース集中を図ることで、グループが描く「技術革新を通じて消費者体験を向上させ、業界全体で質の高い成長を促進していく」というビジョンが推進されるのかどうか、成否が注目される。