ウォルマートが、スマートテレビメーカーとして知られるビジオ(VIZIO)の買収を完了した。2024年2月に発表された買収計画は、連邦規制に基づく待機期間の満了を経て12月3日に正式に成立し、完全希薄化後の株式価値は約23億ドル(1株当たり11.50ドル)に達した。ウォルマートは家庭用エンターテインメントと広告事業分野での成長を加速する。  

家庭用エンターテインメントと広告事業の融合

 買収により、ビジオのスマートテレビ用プラットフォーム「スマートキャスト」を活用し、新たなショッピング体験の提供を目指している。また、ビジオの広告事業をウォルマートの小売りメディア事業「ウォルマート・コネクト」と組み合わせることで、広告主が消費者にリーチしやすくする戦略だ。 ウォルマート・コネクトは25年1月期第3四半期(24年8~10月)に前年同期比26%の成長を記録し、広告主数は60%増加している。  

 ウォルマート米国事業の成長責任者であるセス・ダレア氏は、「ビジオは広告事業を迅速に構築・収益化しており、ウォルマート・コネクトと組み合わせることで、さらに顧客のための投資を拡大できる」と述べた。  

「スマートキャスト」が5年で5倍に成長

 一方、ビジオの創業者兼CEOであるウィリアム・ワン氏は、「ウォルマートの豊富なリソースを活用することで、家庭用エンターテインメント分野での使命をさらに加速させられる」と述べている。  

 ビジオは02年に設立され、カリフォルニア州アーバインに本社を置く。同社のスマートテレビ用プラットフォーム「スマートキャスト」は23年段階で1900万以上のアクティブアカウントを持ち、18年から約400%の成長を遂げた。  

 ビジオはスマートキャストを基盤に広告事業「プラットフォーム・プラス」を展開しており、同社の総利益のすべてを占めるまでに成長している。  

 ビジオのクラスA普通株式はニューヨーク証券取引所から上場廃止となる。 買収関連コストにより、25年1月期第4四半期(24年11~25年1月)および26年1月期の1株当たり利益(EPS)には若干の希薄化が予想される。それでもウォルマートは、この買収を内部収益率(IRR)が投資収益率を上回るものとして評価しており、中長期的には成長への寄与が期待される。