ウォルマートは6月27日、カンザス州オレイサにおいて、同社初となる「自社所有・自社運営」のカット済み牛肉(ケースレディ・ビーフ)施設の開設を発表した。施設は延べ床面積30万平方フィートを超える最新鋭の規模を誇り、アンガス牛のカット・パッケージング・流通までを一貫して担う。

 今回の新設は、同社が進める食肉サプライチェーンの垂直統合戦略の中核をなすものであり、ウォルマートの食品事業における品質管理、透明性、効率性の向上を象徴する動きである。

600人超の雇用など地元経済に波及効果

 この施設の稼働により、カンザス州オレイサおよびその周辺地域において600人以上の雇用が新たに創出される。さらに、地域のサプライヤーやサービス業者にとっても業務拡大の好機となり、地元経済に波及効果をもたらす。

 施設ではサステナブル・ビーフLLC(ネブラスカ州ノースプラット)から直接仕入れたアンガス牛を、パッケージ済みの状態に加工し、ウォルマートの流通センター経由でミッドウエスト各地の店舗へと出荷する体制を整える。

 ウォルマート米国食品部門のジョン・レイニー上級副社長は、「オレイサの新施設は、手ごろな価格で信頼できる食品を届けるという顧客ニーズに応えるものである。この施設が完全にウォルマートの所有・運営であることにより、一貫性、透明性、そして顧客にとっての価値を一層高めることが可能になる」と述べた。

3年前の地元企業への出資が始まり

 今回の動きの背景には、2022年にウォルマートが実施したサステナブル・ビーフLLCへの出資がある。同社は地域密着型の生産者主導の組織であり、原則として施設から250マイル以内の農家から家畜を調達している。高品質なアンガス牛の産地として知られる同地域での取り組みにより、トレーサビリティと地域経済支援を両立した供給体制が構築されてきた。

 カンザス州のローラ・ケリー知事は、「カンザス州は長年にわたり農業産業をリードしてきた。今回のオレイサへの投資は、当州の地位をさらに確固たるものにし、食品生産および流通の革新を通じて、州全体そしてミッドウエスト地域の食を支える取り組みを前進させるものである」と、ウォルマートの投資を歓迎している。

 また、オレイサ市のジョン・ベーコン市長も、「今回の進出は、ウォルマートが我々の地域と労働力を信頼していることの証であり、600人以上の新規雇用創出により、オレイサの地域経済と農業基盤を強化するものだ」と述べている。

地元4団体へ計9万ドルの助成金も

 ウォルマートは、施設の開設を記念して地域貢献も実施する。以下4団体に対し、総額9万ドルの助成金を贈呈した。

  • カンザス・スペシャルオリンピックス(3万5000ドル):知的障がいを持つ子どもと大人に対し、年間を通じてスポーツ訓練と競技機会を提供。
  • ボーイズ&ガールズクラブ・グレーター・カンザスシティ(2万ドル):学習支援、リーダーシップ教育、健康的生活習慣を促進する放課後・夏季プログラムを実施。
  • フレンズ・イン・サービス・オブ・ヒーローズ(3万ドル):退役軍人とその家族に対し、リハビリ機器支援、生活支援、感情的支援を提供。
  • 市長ベーコンの読書クラブ(5000ドル):地域の子どもたちに無料で本を配布し、読書推進イベントを通じてリテラシーを向上。

 さらに、ウォルマートの店舗・クラブおよびウォルマート財団は、2024年度において、カンザス州の地域団体へ総額960万ドルを寄付しており、企業市民としての姿勢も明確にしている。

 今回のオレイサ施設開設は、ウォルマートが推進する「米国内製品への投資戦略」の一環でもある。同社は2031年までに3500億ドルを米国製造・栽培・組立製品に投資することを宣言しており、すでに年間支出の3分の2以上が米国内由来製品に充てられている。

 また、同社は毎年「オープン・コール」という調達イベントを開催しており、米国内の製造業者や革新的な製品開発企業に対してウォルマートとの取引機会を提供している。2025年のオープン・コールへの申請締切は7月25日となっている。