J.フロント リテイリングは、グループのCVC「JFR MIRAI CREATORS Fund」 を通じて、予約サイト「Otonami」を運営するJ-CATに追加出資をする。 J.フロントが追加出資をするのは今回が初となる。

 J-CATは、本物志向のハイクラスな会員に向けて、上質かつ特別な感動体験を提供する予約サイト 「Otonami」や、インバウンド向けの「Wabunka」などのwebサービスを展開している会社だ。

「Otonami」は、文化・芸術など、今年4月時点で約490の体験プランを提供している

「Wabunka」は、訪日客向けに宿泊と文化体験をシームレスに組み合わせたプランを毎月約20プラン追加している

  今回の追加出資では、今年4月に東京大丸店の10階にオープンしたJ-CATが手掛ける初の実店舗「Otonami Lounge Tokyo」のサービス拡充を図る狙いで、国内富裕層はもちろん、訪日客をリピーターにするための「体験」を意識した取り組みを加速する。

 Otonami Lounge Tokyoは、ワークショップ型の店舗として、Otonamiで提供しているコンテンツ同様に、習い事感覚で参加できる講座や、日本文化の魅力を体感できる展示・販売を提供している。例えば、1回完結プランとして、「薬膳・発酵料理研究家に学ぶ薬膳茶の基礎」(8800円〜)や、「季節の香席から学ぶ香道のいろは」(9600円〜)のほか、複数回プランも用意。知的好奇心が高い大人の学びの場として支持されている。

 J.フロントとの協業について、J-CATの飯倉竜代表取締役CEO(冒頭写真左)は、5月15日の記者発表会で「大丸や銀座シックスとのコラボも徐々にスタートしている。他のフロアで展開している和菓子の会社さんなどには、10階(Otonami Lounge Tokyo)に来ていただいて、ワークショップができるよう我々が予約システムを用意している。現状は国内向けだが、今後は訪日客向けのワークショップも企画していく」と話した。

 東京駅直結の東京大丸店は、1階の食品、土産売り場の集客はあるが、上層階への買い回りが少ないほか、アパレル物販の認知が低いのが課題だ。同店舗においては、賃貸借契約ではなく、収益分配モデル「レベニューシェア」という形態をとっているため、「(東京大丸店と一緒に)上層階への誘引を図る取り組みを進め、店舗を盛り上げていく」(飯倉CEO)方針だ。

 JNTO(日本政府観光局)によれば、近年の富裕層の志向は、物質的な豊かさではなく、「経験」「意義」を重視する傾向が強いという。とくに20〜30代のミレニアム世代を中心にこうした新型の「モダンラグジュアリー」志向が高まっており、旅行のニーズは、「文化」「起源」「独自性」などをキーワードに〝本物〟を求める行動スタイルへと変化している。

 J-CATはこうした市場変化に対応し、日本の魅力を感動体験へつなげるコンテンツを開発するほか、サプライヤーとユーザーをつなぐ魅力的なUIで新たな市場を掘り起こしていく戦略だ。