英小売り大手マークス&スペンサー(M&S)は7月7日、過去最大となる食品単独店舗をサリー州ゴダルミングに開業すると発表した。開業は7月16日。あわせて価格訴求型の日常商品群「リマーカブル・バリュー」を29品目追加して、175品目に拡大する。食品事業の規模を倍増させる方針を掲げる同社が、家族連れの顧客層の取り込みに向けて投資を強化するものだ。

 新店舗はホームセンターのホームベース跡地を取得したもので、店舗網の新設・刷新を通じて事業を現代化する投資の一環。より大型の食品店舗を設けることで、食品の全品目を取り扱い、週次でまとめ買いをする家族連れ需要に応える狙いがある。同社は新店を「現代の家族の買い物の仕方を軸に設計した」と説明しており、顧客が買い物リストの品を一度の来店で全て揃えられることを目指す。

 売り場の特徴としては、ハーブ、有機食品、果物の各売り場に複数の温度帯を設けた陳列を導入し、必要な商品を一カ所で選べるようにする。店内ベーカリーもより大型化し、鍋、フライパン、調理器具といった台所用品を扱う「キッチンショップ」を新設する。このほか、生鮮売り場の通路を広く取り、ロティサリーチキンのカウンターを設置するほか、子ども用のミニカートを用意するなど、家族連れを意識した工夫を盛り込む。

「リマーカブル・バリュー」に日常の定番29品目を追加

 新店舗では、拡充後の「リマーカブル・バリュー」全品目を取り扱う。同商品群は今週、パン、乳製品、グロサリー、精肉、清涼飲料、家庭用品、衛生用品にまたがる日常の定番29品目を加え、175品目となる。新たに加わる商品には、フルーツ&ファイバー・シリアルフレーク、白パンのフィンガーロール、豚肩ロースステーキ、電子レンジ調理用ライスなどが含まれる。

 同社によれば、リマーカブル・バリューは低価格帯の入門的な自社ブランドではなく、英国の食品小売り市場全体の価格水準と比較して値付けした日常商品でありながら、品質、調達、原材料、動物福祉の基準はM&Sの通常商品と同一だという。これまでに全量追跡可能な英国産牛ひき肉、平飼い卵、牛乳、生鮮青果、動物福祉水準の高い「オーカム・ゴールド」チキンなどを同商品群に投入しており、こうした投資が家族層におけるM&

 M&S食品の価格イメージの転換につながったとしている。同社は調査会社ワールドパネル・バイ・ニュメレーターのデータをもとに、金額・数量の両面で家族層の支持を最も速く伸ばしている小売業者だと説明している。

 M&Sフードのアレックス・フロイトマン社長は「食品事業を倍増させるにあたり、家族層の顧客が最も求めている分野、すなわち、より大きくより良い店舗と、毎週購入する商品における信頼できる価格に投資している。ゴダルミングは当社最大の食品単独店となり、事業倍増に向けて投資を進める現代的なフルレンジの食品ホールの見本となる。同時にリマーカブル・バリューを175品目に広げることで、より多くの顧客がM&Sに期待する品質を妥協することなく、日常的な低価格で購入できるようになる」と述べている。

 なお、同社の価格施策としては、リマーカブル・バリューのほかに、値下げ後の価格を固定する「ドロップト・アンド・ロックト」、大容量商品を割安にする「ビガー・パック・ベター・バリュー」があり、これらを組み合わせて家族連れが週次の買い物のより多くをM&Sで済ませられるようにする考えだ。

 M&Sは英国では品質の高さで知られる一方、価格面では大手総合スーパーやディスカウンターに比べて割高との受け止めが根強く、日常の「買い物リスト」の受け皿というより、特別な機会や惣菜目的の利用が中心とされてきた。今回の発表は、大型店舗と価格訴求型商品群の両輪で、この構図を転換しようとするものと位置づけられる。

 注目されるのは、同社が「食品事業の倍増」という目標を投資の前提として繰り返し示している点だ。過去最大の単独店をあえてホームセンター跡地という大型区画に構えたことは、従来の都市型小型店とは異なる、週次のまとめ買いに対応する店舗フォーマットを本格的に育てる意思の表れといえるだろう。