「使用の日常化」で求められる新潮流への対応

 ユニ・チャームがマスクカテゴリーで攻勢に出る。コロナ禍以降、小康状態にある市場を再活性化すべく、新たなニーズを的確に捉えた新商品を投入。また、これまで商品展開していなかった価格帯にも参入することで、カテゴリーにおける存在感を強化。「今、仕掛ける企業と仕掛けない企業で差がつく」(ユニ・チャーム担当者)状況をいち早く察知し、マスク顧客の囲い込みに挑む。

 マスク市場はコロナピーク時の3000億円規模からは縮小したものの、現在もコロナ前比1.4倍の1000億円強の金額を維持、2025年は1276億円で着地した。この規模は日用品の中でも上位に位置し、ベビー用おむつとほぼ匹敵する。しかもマスクは、特定の高単価ユーザーに支えられているわけではなく、客数が多いことに特徴がある。つまり仕掛け次第で広範な生活者を継続的に囲い込め、来店動機の創出・再来店の固定化にも直結。小売業にとって極めて重要な「集客型カテゴリー」と言えるのだ。

 一方で、26年のマスク市場は微減が予測される。市場縮小の背景には、「使用率」「使用枚数」「単価」の下落がある。着用場面の適正化や消耗品化による低価格シフトが原因だが、これは需要の消失ではない。生活に定着したからこそ従来品への不満が顕在化しており、この構造変化が新たな潮流を生む契機となっている。

 ユニ・チャームが着目する潮流は大きく三つある。第一は、見た目へのこだわりだ。「どうせ身につけるなら見た目が良いものをつけたい」というニーズであり、直近ではそこからさらに一歩進んで、「『理想の自分を表現する手段』としてマスクが捉えられ始めている」と担当者は分析する。

 第二は、長時間装着を前提とした快適性だ。日常生活にマスクが定着したことでストレスを感じる場面が増加。1日中つけていても快適なマスクへの需要が高まっている。

 第三は、コスパ意識の高まりだ。お手頃に、かつ機能面でも満足できる商品を買いたいという要求が、日常使用による使用量増、さらにはインフレによって強まっている。

 この三つの潮流に対し、ユニ・チャームは新たな価値を提案していく。9月15日から投入する新商品はそれぞれ「見た目」「快適性」「コスパ」に対応。マスクの最需要期である秋冬に向けて展開することで、ブランドスイッチやランクアップはもちろん、カテゴリー全体の活性化を目指していく考えだ。

メイク発想で差別化するカラーマスクの新ライン

 まず「見た目」の領域における象徴的な提案が、カラーマスクブランド「ユニ・チャーム SMARTCOLOR」の進化だ。

 コロナ禍以降、二つ折りのカラーマスクは「ファッションから浮かない」「顔まわりをすっきり見せる」などのニーズを捉えて浸透した。併せて商品数も増えたが、店頭には似通った商品が多く並んでいるのが実情だ。マスクの色選びも「なんとなく自分に合いそう」といった感覚的な理由での購入に留まっている。ユニ・チャームの調べによると、消費者の約7割が「肌のトーンや顔立ちをよく見せたい」など、マスクで理想の見た目を叶えたいニーズを持ちながら、それに応える商品や提案は不十分だった。

 こうした課題に応えるべく、同社が開発したのがSMARTCOLORの新ライン「ツヤのせBeige」の2品だ。新商品のポイントはマスクの構造にメイクの技法を応用したことにある。マスクの内側に仕込んだ「しのばせカラー」の層が、メイクのコントロールカラーのような効果を発揮。パープルの生地を仕込んだ「透明感あふれるツヤのせBeige」では、その名の通り自然な透明感をプラスする。ピンクの生地を仕込んだ「血色感あふれるツヤのせBeige」では、ほんのり赤みを感じる自然な血色感をプラスする。さらに表面には光沢のある素材を使用し、ファンデーションのトレンドとなるツヤ感を演出。こうした見た目への効果は、日本メイクアップアーティスト協会JMANからも公認を得ている。

 加えて、マスクの形状そのものにもこだわった。目元の曲線に沿うカーブ形状、目元の極小エンボス加工を施すことで、目元印象を格上げする仕様とした。

 まるでメイクをするように、なりたい顔印象を叶えるカラーマスク――こうした価値を伝達すべく、パッケージにおいてもコスメを想起させるワードやデザインを活用、メイク効果を直感的に伝達していく。メイクアップアーティスト公認であることも明示し、光沢のある包材で上質感を醸成。機能価値と情緒価値の両面から、マスクの新たな購買動機を喚起していく。

マスクをしたまま行う「会話」シーンに着目

 快適性にこだわった「つけごこち」の領域では、「会話」に着目した新商品を発売する。コロナ禍を経て、職場や学校によっては現在もマスク着用が基本となっている場所もあるが、そうした長時間使用の中で顕在化しているストレスが「会話のしにくさ」だ。「マスクをしていると口元にまとわりついて煩わしい」「会話中、マスクがずれて邪魔」などと感じている人は、つけごこちを重視するユーザーの約2人に1人に上る。

 そこでつけごこちを追求する「超快適」ブランドから提案するのが「超快適マスク 会話ストレスフリー※1」だ。今回新たに口元に空間を形成するアーチ構造を搭載。会話中も形状を維持し、口の動きを邪魔しにくいマスクを実現した。加えて軽量化や耳掛けの伸縮性アップ、超やわらかノーズフィットの搭載により、マスク装着に伴う圧迫感自体を極力なくす設計とした。

 パッケージはマスク売り場では珍しいイラスト仕様とし、「会話ストレスフリー※1」の独自価値をわかりやすく伝達。併せて、超快適ロゴとウイルス飛沫カットフィルタの表記で安心感・品質感も担保した。サイズはふつうと大きめの2品展開。会話が多いビジネスパーソンや、マナー面からマスクを長時間つける層にアプローチし、快適性を求めるニーズをもう一段掘り起こす。

 また新商品の発売と併せ、主力の「超快適マスク」もリニューアルを実施する。マスクを長時間使用する際につきものの毛羽立ち、耳の痛みの二大ストレスに着目。新商品を開発した技術を応用し、口元に空間を形成する加工を従来品にも搭載することで肌こすれを軽減、毛羽立ちを抑える改良を施した。また、既存機能である伸縮不織布を採用した幅広耳かけの機能を改めて訴求する。パッケージに新メッセージ「1日中 耳と肌のストレス0へ※2」を入れ込み、超快適を選ぶ理由を今一度アピール。ブランドの基盤強化を図る構えだ。

値頃と機能を両立した新商品でスタンダード市場に本格参入

 プレミアム提案の一方、ユニ・チャームは今期、スタンダード(ピース単価30円以下)市場への本格参入にも乗り出す。

 同社のセグメンテーションによれば、現在マスク市場のプレミアムとスタンダードの比率はおよそ6対4となっている。これまでユニ・チャームはプレミアムを中心に商品展開してきたが、それだけでは市場の半数近くにはリーチしきれていない現状があった。節約志向の高まりからスタンダードの構成比は今後さらに高まる予測。新領域の開拓は同社のさらなる成長に向けた必須条件というわけだ。

 スタンダードユーザーはマスクに対し価格重視の傾向を持つが、単に安さだけを求めているわけではない。ユニ・チャームの担当者は、「スタンダードユーザーも『マスクと顔の間にスキマができない』『耳が痛くなりにくい』などの基本機能を求めている。ただ機能と価格のバランスをシビアに見る中で、現状安値の商品を選ぶと機能はトレードオフせざるを得ないと諦めている」と分析する。

 新商品「超快適マスク everyday fit」はこの〝諦め〟に切り込む。お手頃価格でありながら、差別化された品質・機能をしっかりと備える設計にこだわった。顔を覆う部分は小売りのPBなどでよくある真四角の形状ではなく、頬と顎に密着するフィット構造を採用。ユニ・チャームマスクの標準機能であるウイルス飛沫カットフィルタも搭載した。耳かけもスリムでやわらかい仕様となっているため、耳が痛くなりにくい。価格は50枚入りで1000円前後を見込んでおり、「この価格帯でここまでの商品機能を持ったマスクはなかなかないのではないか」と担当者も太鼓判を押す。

 ユニ・チャームはスタンダード市場の構造を、ピース単価でさらに二分して捉えている。ピース単価11~30円の「コスパ」帯と、単価10円を切る「エコノミー」帯だ。ユニ・チャームはエコノミー帯で低価格競争を繰り広げる考えはない。あくまでコスパ帯で新客を獲得していくことで、市場のスタンダード構成比が増える中でもピース単価の下落を抑制。ボトムからのアップセルで市場をもり立てていく方針だ。

売り場提案でもピース単価向上に貢献

 新商品投入、スタンダード領域への進出を踏まえ、店頭での売り場提案にも力を入れる。

 基本はセグメント別のブロッキング陳列を踏襲し、機能軸で商品を整理。その中に新商品を組み込み、比較検討を促進する。「SMARTCOLORツヤのせBeige」は、同ブランドの既存バイカラーマスクと並列配置し、自然なランクアップを促す。同様に「超快適マスク 会話ストレスフリー※1」はつけごこちを訴求する商品ゾーンに投入。夏場も含めて通年で打ち出す「超快適マスク 息ムレクリア」などと隣接させ、ニーズに応じた選択肢を増やす。また、高単価商品ほど上段への優位陳列を推奨することで、ピース単価引き上げに貢献する。

 一方、スタンダード商品は箱型の形状を生かして下段で大量展開されることが多いため、新発売の「超快適マスク everyday fit」もここに提案する。2段積みを確保し、数量販売を狙っていく構えだ。

 プロモーション施策では今回、「SMARTCOLORツヤのせBeige」においてアンバサダーを活用したPRを実施する計画。店頭ディスプレイやデジタル素材を作成・展開し、新商品の認知拡大と拡販を強力に後押ししていく。

 健康や安心を守るマスクの価値はもちろん、きめ細かな消費者分析でマスクの新たなポテンシャルを提示するユニ・チャーム。市場の活性化を主導し、再成長の牽引役を買って出る。


※1 会話のしやすさを表した表現であり、感じ方には個人差がある
※2 ユニ・チャーム比