英国小売最大手のテスコは1月5日、ナショナルブランド(NB)を中心とした数千品目の価格を長期的に固定・維持する新施策「エブリデー・ロー・プライス」を開始した。インフレ環境下で高まる消費者の生活防衛意識に応えつつ、ブランドへの強いこだわりを持つ層を競合店へ流出させない戦略である。

「圧倒的な低価格」を継続提供

 テスコが今回打ち出した「エブリデー・ロー・プライス」は、英国の家庭で最も親しまれているブランド製品を対象に、一過性のセールではなく「毎週変わらぬ低価格」を約束するものだ。

 対象となるのは、ウィートビックス(シリアル)、フェアリー(洗剤)、ハインツ(ベイクドビーンズ)、PGチップス(紅茶)といった、英国市場におけるカテゴリーリーダー的な存在の3000品目以上に及ぶ。テスコはこれまでもディスカウントスーパーのアルディに対抗する「アルディ・プライスマッチ」や、自社のロイヤルティプログラム会員向けの「クラブカード・プライス」を展開してきたが、今回の施策はそれらを補完し、さらに強化する位置付けとなる。

 特筆すべきは、対象ブランドの規模だ。テスコによれば、低価格を維持するブランド数はこれまでの約3倍に拡大。これにより、毎週の買い物における価格の予測可能性を顧客に提供し、圧倒的な安心感を醸成する狙いがある。

「ブランドへの執着」と「店選びの基準」

 今回の施策の背景には、テスコが実施した最新の消費者調査がある。この調査結果は、小売業者が価格競争を勝ち抜く上で、プライベートブランド(PB)への注力だけでは不十分であることを示唆している。

 調査によると、英国の買い物客の64%が「絶対に他のブランドに乗り換えない、お気に入りの製品がある」と回答した。また、25歳から34歳の層においては、79%が「ブランド製品の品揃えが良いこと」を店選びの重要な基準に挙げている。

 これは、生活コストの増大により節約志向が強まる中でも、特定のカテゴリーにおいては「価格よりも馴染みのあるブランドの品質や味」を優先する消費者の心理を反映している。テスコはこの「ブランドへの愛情」を戦略の核に据え、顧客が他店に浮気することなく、テスコ一箇所ですべての買い物を済ませられる「ワンストップ・ショッピング」の利便性を高める戦略だ。

歴史的シンボルの復活とマーケティング戦略

 マーケティング面での大きな特徴は、テスコの歴史的な象徴である「青と白のストライプ」の復活だ。かつてテスコの「バリュー(お値打ち品)」を象徴したこのレトロなデザインを現代風にアレンジし、新ロゴとともに店頭や広告で大々的に展開する。

 これは単なるデザインの変更ではなく、長年築き上げてきた「価格に強いテスコ」というブランドイメージを再定義する試みである。消費者のノスタルジーに訴えかけつつ、現代的な価値提案と融合させることで、信頼性の回復とブランドの再活性化を図っている。

 以下は「エブリデー・ロー・プライス」の主な対象製品と設定価格の例である。

製品名販売価格
フェアリー・オリジナル 食器用洗剤 320ミリリットル90ペンス
ヌテラ ヘーゼルナッツ・チョコ・スプレッド 350グラム2.90ポンド
マーマイト 250グラム2.85ポンド
ウィートビックス 12個入り2.00ポンド
ブランストン・ピクルス 360グラム2.20ポンド
ベンズ・オリジナル クラシック・バスマティ電子レンジ用ライス 220グラム1.00ポンド
ヘルマン リアル・マヨネーズ(スクイーズボトル) 430ミリリットル2.00ポンド
ラーパック 加塩スプレッド 250グラム3.30ポンド
PGチップス オリジナル紅茶 40個入り1.70ポンド
ケロッグ フルーツ・アンド・ファイバー・シリアル 700グラム3.50ポンド
アクアフレッシュ フレッシュミント歯磨き粉 75ミリリットル95ペンス
ウォーバートンズ ソフトホワイト・ファームハウス・ローフ 800グラム1.50ポンド
ロレアル エルヴィーヴ・ハイドラ・ヒアルロニック・シャンプー 700ミリリットル5.75ポンド
バーズアイ クリスピー・チキン 170グラム1.25ポンド
ピルグリムス・チョイス エクストラ・マチュア・チェダーチーズ 350グラム3.00ポンド
リッチモンド ポークソーセージ(太め) 12本 615グラム2.00ポンド
ハインツ ベイクドビーンズ(トマトソース) 150グラム60ペンス
キャドバリー ハイライツ・ミルクチョコレート・ドリンク 180グラム4.60ポンド

 テスコUKの最高経営責任者(CEO)であるアシュウィン・プラサド氏は、「顧客が毎週トロリーに入れるお気に入りのブランド品を、安定したテスコ・バリューで提供することを約束する」と述べている。

 この動きは、英国小売市場における価格競争が、単なる「最安値」の争いから、「ブランド品を含むバスケット全体の価値」の争いへと移行していることを示している。特にアルディやリドルといったハードディスカウンターがPBを中心にシェアを伸ばす中、テスコは「強力なNBの品揃えと安定した低価格」を組み合わせることで、大手スーパーマーケットとしての優位性を再構築しようとしている。