英国最大手スーパーマーケットのテスコは12月15日、フランスの生成AIスタートアップ、ミストラルAIと3年間のパートナーシップ契約を締結したと発表した。小売業務全般における人工知能(AI)活用を一段と強化する戦略の一環であり、欧州発のフロンティアAI企業と英国大手小売が本格的に連携する点で注目される。
今回の契約により、テスコはミストラルAIが提供する商用AIモデルすべてにフルアクセスできるほか、将来開発される新モデルや、同社のAIエンジニアリングチームとの直接的な協業も可能となる。単なるツール導入にとどまらず、技術開発段階から深く関与する点が特徴である。
AIラボ設立し共同開発
両社は新たに共同の「AIラボ」を設立し、テスコの技術専門家とミストラルAIのエンジニアが協力して、生成AIソリューションを共同開発する。対象は特定業務に限定されず、商品・販促コンテンツの作成、社内文書のドラフト作成、データ分析の高速化、従業員向け情報アクセスの高度化など、テスコの事業全域に及ぶ。
テスコはAI活用の目的を、顧客体験、従業員体験、サプライヤーとの関係性の改善に置いている。生成AIを通じて業務効率を高めることで、従業員がより付加価値の高い業務に時間を割ける体制を整え、最終的には店舗やオンライン双方での顧客サービス向上につなげる狙いだ。
テスコはすでにAIを実運用に組み込んでいる。オンライン注文では、AIによる配送ルートの最適化により配送枠を拡大し、需要予測では複雑な購買データを分析することで高い商品供給力を維持している。また、テスコ・クラブカードを通じた顧客データ分析により、パーソナライズされた顧客対応も進めてきた。今回の生成AI活用は、こうした既存施策をさらに高度化する位置付けとなる。
英国小売業界では先駆的な試み
テスコは過去5年間でテクノロジーチームの規模を2倍に拡大しており、新技術への継続的投資を明確にしている。データ、アナリティクス&AI担当ディレクターのルーベン・ララ・エルナンデス氏は、「イノベーションは常にテスコのDNAの一部であり、今回の契約は顧客、従業員、サプライヤーすべてに利益をもたらす技術開発の延長線上にある」とコメントしている。
一方のミストラルAIは、欧州で唯一、大規模言語モデルを自社開発するフロンティアAI企業とされる。2023年4月の設立以降、急速に成長しており、すでにHSBCやアクサ、ステランティスといった大企業を顧客に持つ。最高収益責任者兼米国事業責任者のマージョリー・ジャニエヴィッツ氏は、「テスコの専門知見と当社の最先端AI技術を組み合わせ、内部業務の効率化と顧客体験の向上につながる制御性の高いAIプロダクトを構築する」と述べている。
英国小売業界ではAI活用が急速に進む一方、生成AIを戦略レベルで共同開発する事例はまだ限られている。今回の提携は、欧州発AI技術を軸に、小売の業務構造そのものを再設計しようとする試みとして注目される。




















