ウォルマートは11月14日、現ウォルマート米国CEOのジョン・ファーナー氏を2026年2月1日付けでウォルマート社の新たな社長兼最高経営責任者(CEO)に選任すると発表した。ファーナー氏は同日より同社の取締役にも就任している。

  これに伴い、現CEOのダグ・マクミロン氏は26年1月末をもって退任することが決まったが、取締役として次の年次株主総会までは留任し、27年1月末まではファーナー氏のアドバイザーとして引き続き経営支援にあたる。 

AI時代を見据えたリーダー交代

  ファーナー氏は1993年にウォルマートで時給制従業員としてキャリアをスタートさせ、商品部門やオペレーション、調達分野で要職を歴任してきた。2019年からはウォルマート米国の社長兼CEOとして、全米4600店を超える店舗を管轄し、急速に進むデジタル化の波に対応しつつ、従業員の育成や組織改革、AI活用を積極的に進めてきた。ウォルマート取締役会会長のグレッグ・ペナー氏は、ファーナー氏の実績とグローバルな視点を評価し、「彼は次の成長と変革を導くにふさわしい人物である」と述べている。

一方、09年からCEOを務めてきたマクミロン氏は、社内改革の推進者として知られ、オンラインと店舗の融合戦略、従業員への大型投資、そしてAIを活用したECシステム構築など、ウォルマートに革新の波をもたらした。結果として、同社の25年1月期の売上高は6810億ドルに達し、世界210万人の従業員を抱える巨大な小売企業として成長を維持してきた。ペナー氏は「マクミロン氏はウォルマートを一段と強く、革新的な企業へと変貌させた」とその貢献を称賛した。

  ファーナー氏は「ウォルマートが自分の人生を形成した企業であることに感謝し、AIによる新しい小売時代でも使命と価値観を軸に進化を続ける」と述べ、マクミロン氏の指導に感謝しつつ新時代の抱負を示した。今後は、AI活用を中心とする次世代のオムニチャネル戦略をさらに強化し、従業員や地域社会への投資と顧客体験向上を両輪として、企業価値の向上を図る方針だ。なお、ウォルマートは米国事業の新CEO候補を26年度末までに別途公表する予定だ。

  フィナンシャル・タイムズは、マクミロン氏の10年以上にわたるCEO在任期間中に同社収益が6810億ドルまで拡大し、株価もS&P500をアウトパフォームした点を強調。今回の交代は「強固な局面からの段階的移行」であり、投資家たちは貢献の大きいマクミロン氏の退任を惜しむ声もあると報じている。

  ただし、同期間にウォルマートとアマゾンの時価総額が逆転し、現在は3倍以上に開いてしまっている。ニューヨーク・ポストは、交代発表直後にウォルマートの株価が市場前取引で約2.8%下落したことを報じている。マーケットの評価は、「まずはお手並み拝見」ということだろう。 

(トップ画面:向かって左がジョン・ファーナー氏)