ウォルマートは、自動車整備サービスにおいてもデジタル化を加速させている。10月9日、米国アーカンソー州フェイエットビルにおいて「未来のオートケアセンター(ACC of the Future))」の第1号店をオープンしたと発表した。これは、同社が提唱するオムニチャネル戦略をカーケア領域に拡張する試みであり、アプリと連動した非接触型の車両メンテナンスサービスを提供するもの。

非接触・アプリ連動で進化するカーケア体験

 今回の新モデルでは、店舗での整備作業とデジタルサービスが完全に統合されている。顧客はウォルマートアプリを通じて予約・チェックイン・進捗確認・支払いまでをすべてオンラインで完結できる。来店時は指定の駐車スペースに車を停め、アプリの案内に従ってロッカーに鍵を預けるだけで整備が始まる仕組みだ。

 整備の進行状況はアプリ上でリアルタイムに確認でき、完了後は支払いを済ませて鍵を受け取る。完全非接触ながら、これまでと変わらぬ専門技術によるサービスを受けられる点が特徴である。

 ウォルマート米国部門ハードライン担当シニアバイスプレジデントのコリー・ベンダー氏は、「これまでACCは『価値と利便性』を重視して設計してきた。今回の新モデルは、顧客に信頼される従来のサービスを、よりシームレスでライフスタイルに合った形で提供することを可能にした」と語る。

全米約2600拠点に広がるネットワーク

 ウォルマートが初のオートケアセンターを開設したのは1979年、オクラホマ州クレアモアに遡る。現在では全米2582のスーパーセンターに併設されており、国内有数の自動車整備サービス網を構築している。

 同社は「エブリデー・ロー・プライス(EDLP)」の理念のもと、タイヤ交換5ドルから、オイル交換27ドルからという低価格を維持。対象車種の拡大やタイヤ・バッテリー・オイルといった関連商品の拡充を続けてきた。今回の非接触モデル導入は、こうした価格競争力に“体験価値”を上乗せする新たな進化である。

 ウォルマートは、同社アプリを単なるECプラットフォームではなく、生活全般を支える“デジタルアシスタント”へと進化させている。アプリ内ではカーサービスの予約に加え、週次の食料品注文、ワクチン接種予約なども可能だ。

 米国部門ショッピング体験担当シニアバイスプレジデントのトレーシー・プリオット氏は「ウォルマートアプリは生活に必要なあらゆることを一か所で完結できる場であり、時間を節約することで“より良く生きる”を支援する」と述べている。

 ウォルマートは過去2年間でオンラインによる整備予約を通じて660万時間以上の顧客時間を節約したという。また、タイヤカテゴリーでは「ウォルマート・マーケットプレイス」のタイヤを対象に取り付けサービスを拡大し、オンライン購入から店舗での取付までの一貫対応を実現した。

 非接触型ACC により、アプリを中心に、店舗・デジタル・物流が一体化することで、「車を整備する場所」から「顧客の生活時間を最適化する拠点」へと進化する可能性がある。