米最大のスーパーマーケット大手クローガーと、米デリバリープラットフォームのドアダッシュは9月29日、提携を拡大し、全米で即時配送サービスを強化すると発表した。10月1日から、クローガー傘下の約2700店舗がドアダッシュ上に正式に登場し、最短1時間で生鮮食品や日用品を届ける体制を整える。
両社の協業は、急速に進化するオンデマンド小売の中で、従来の店舗網とデジタルチャネルを融合させ、より広範な顧客層を取り込む狙いがある。
アプリ上で「全品目」の注文が可能に
今回の提携により、消費者はクローガー各店が扱う生鮮食品や家庭用品、自社ブランド「アワーブランズ」などをドアダッシュアプリ上で注文できるようになった。対象となるのは、マリアノズ、フレッド・マイヤー、ラルフス、ハリス・ティーターなど、全米に展開する主要チェーンである。
ドアダッシュ上では、迅速な配送に加え、クローガーの割引やロイヤルティプログラムがアプリ内でシームレスに連携する。利便性と価格の両立を重視する消費者ニーズに応える形となる。
クローガーの最高デジタル責任者(CDO)であるヤエル・コセット氏は、「お客様が望む方法で、価値を損なうことなくサービスを提供したい。今回の提携は、お客様の生活をよりシンプルにする新たな一歩である」と述べた。
同氏はさらに、デリバリーを通じて新しい顧客層を獲得し、購買データを小売メディア事業の基盤として活用していく方針を示した。
クローガーは近年、食品小売事業にデジタル戦略を積極的に導入しており、ECサイトやアプリ上でのクーポン配信、AIによる販促最適化など、データを軸にした新しい購買体験を打ち出している。
ドアダッシュにとっても節目
一方、ドアダッシュの社長兼COOであるプラビール・アダルカル氏は、「全米でクローガーがドアダッシュに加わることで、数百万人の消費者が最大手の食料品チェーンをオンデマンドで利用できるようになる」とコメントした。
同氏は、今回の提携を「生活必需品を信頼できる価格で届けるという両社共通の理念を具現化するマイルストーン」と位置づける。ドアダッシュは2020年に食料品配送を開始して以降、全世界で月間4200万人以上のアクティブユーザーを抱えるまでに成長しており、米国内では食料品配送が主要セグメントの一つに定着している。
クローガーは、ドアダッシュ・マーケットプレイスを通じて新しい購買機会を創出するとともに、ブランド向け広告や販売分析の共同開発にも取り組む。
両社は今後、店舗ネットワークとドアダッシュのテクノロジーを融合させた新たな配送モデルの開発を進め、より効果的な顧客エンゲージメントを目指す構えだ。
パンデミック以降、食料品のオンライン注文は全米で急速に普及している。クローガーはオムニチャネル戦略の柱として自社ECと提携配送を強化してきたが、ドアダッシュとの関係拡大により、カバレッジと利便性の両面で優位性を確立した形だ。


















