クローガーとアルバートソンズの合併計画が暗礁に乗り上げた。2024年12月10日、オレゴン州の連邦地裁は「合併が競争を著しく減少させる」として、連邦取引委員会(FTC)や複数の州の要請を受けて合併の暫定的な差し止めを命じた。

 翌11日、アルバートソンズはクローガーに対し「契約違反」を理由に提訴。一方のクローガーも、これに真っ向から反論している。

「クローガーは契約違反で不誠実」

 アルバートソンズはデラウェア州衡平法裁判所に、クローガーの「合併契約違反」および「誠実履行義務違反」を主張する訴訟を起こした。主張によれば、クローガーは規制当局の承認を得るために「最善の努力」を怠り、必要な資産売却を拒否し続けたために合併は頓挫した。

 アルバートソンズの法務および政策責任者であるトム・モリアーティ氏は声明で、「合併が実現していれば、消費者や従業員、コミュニティに多大な利益をもたらした」としつつ、「クローガーは自社の利益を優先し、規制当局の懸念を無視した不十分な資産売却案を繰り返し提示した。合併の失敗は、アルバートソンズの株主や従業員に多大な損害を与えた」と批判。数十億ドル規模の損害賠償を求める構えだ。

 さらに、合併交渉の期間中に「数億ドルのリソースを無駄に費やし、新たなビジネスチャンスを逸した」とし、契約解除に伴う6億ドルの違約金の支払いも要求している。 

クローガーも即座に反論「根拠なき訴え」

 これに対しクローガーは、「アルバートソンズの主張には何の根拠もなく、合併失敗の責任を転嫁しようとしている」と反論した。同社は声明で、「合併プロセスを通じて、契約を誠実に履行した」と強調。「規制当局への対応には最大限の努力を尽くした」と述べ、アルバートソンズ側の「妨害行為と契約違反」を法廷で証明する、と自信を見せている。

 クローガーは、合併により市場競争力が強化されると主張してきたが、規制当局はこれを認めなかった。「一部地域では価格上昇や競争減少が避けられない」との判断が下されたためだ。

 オレゴン州連邦地裁がFTCの要請を認めた背景には、明確な「競争減少」の懸念がある。FTCは、クローガーとアルバートソンズの店舗が重複する地域での競争が大幅に減少し、結果的に消費者が価格高騰の影響を受けると指摘した。

 さらに、両社の提案した資産売却先である「C&S ホールセール・グローサーズ」についても、小売事業の経験不足に加え経営能力に疑問が残ると判断された。地裁は「競争の回復力が確保されない限り、合併の承認はできない」と結論付けた。

クローガーは自社株買い復活し株価上昇

 合併計画の頓挫を受け、クローガーは75億ドルの自社株買いプログラムを発表し、うち50億ドルを「加速株式買い戻し (ASR)」 に充てる方針を明らかにした。  

 クローガーのロドニー・マクマレンCEO(最高経営責任者)は「持続可能な成長と株主価値の向上に注力する」とし、今後も「低価格戦略の強化」「従業員賃金の引き上げ」「地域社会への投資」を継続すると強調した。

 自社株買いの発表後、クローガーの株価は3日続伸し、史上最高値を更新している。一方のアルバートソンズも、12月10日こそ一時急落したものの、そこから反転上昇して長年の下降トレンドに反転の兆しがある。株式市場は両社の単独での生き残りを評価しているようにも見える。