フランスの大手小売企業カルフールと協同組合型小売業コーペラティブUは、欧州規模の新たな購買連合「コンコルディス」を設立することで合意した。購買ボリュームの統合を通じてサプライヤーとの交渉力を高め、最終的には価格競争力の強化と消費者への還元を目的とするもので、2026年の商談から本格始動し、まずは6年間の活動を予定している。
カルフールは1959年創業のフランス発グローバル小売りで、現在は世界30カ国以上で事業を展開する、欧州最大級のハイパーマーケット運営企業だ。一方のコーペラティブUはフランス各地の中小規模の小売業者による協同組合で、地域密着型店舗(ユースーパー、ユーマルシェなど)をフランス国内で1500店以上展開している独立系流通グループである。
欧州の他の小売業者の参画も視野
コンコルディスの本部はベルギーの首都でEU本部のあるブリュッセルに置かれ、カルフールの欧州展開力と、同社子会社であるCWTおよびユーレカの国際的専門性を活用する。また、コーペラティブUが過去の国際パートナーシップで蓄積してきた経験も反映される。両社は今後、他の欧州小売業者の参画も視野に入れており、すでに複数の企業と協議を開始している。
新連合の機能は大きく二つに分かれる。一つはブランド消費財を対象とする多国籍企業との購買価格交渉、もう一つは国際サービスの提供である。対象地域はカルフールとコーペラティブUが展開する欧州諸国であり、地域横断的なスケールメリットを活かす構想だ。
この連合は単なるコスト削減を目的とするのではなく、フェアで透明性のあるサプライヤー関係の構築を重視している。カルフールの企業理念とコーペラティブUの協同組合としての価値観を土台とし、農業・食品サプライチェーン全体のバランスを考慮したビジネスプランの共創を推進する。競争法への遵守も明確に掲げており、フランス競争当局「オートリテ・ドゥ・ラ・コンクランス」への届け出が今月末に予定されている。
さらに両社は、本連合とは別に将来的な追加分野での協業方針も明らかにした。たとえば、プライベートブランド商品については、標準的な消費財に限定して共同入札を検討しているが、差別化された商品については各社の独立性を保持する方針。また、ノンフード分野では、カルフールが持つ繊維(テキスタイル)分野の専門知識をコーペラティブUと共有する構想もある。
さらにデジタル領域では、コーペラティブUがパブリシスとカルフールによる小売メディア合弁企業「アンリミテイル」と提携し、リテールメディア戦略の強化を図る予定だ。
カルフールの会長兼最高経営責任者(CEO)であるアレクサンドル・ボンパール氏は「コンコルディスの創設は次世代型購買連合を築く上での決定的な一歩である。今回の提携により、フランス国内で最大の購買勢力となり、欧州レベルでも主導的存在となる」と語った。
一方、コーペラティブUのCEOであるドミニク・シェルシェ氏は「将来的には他の欧州パートナーも受け入れ、さらなるボリューム効果を狙う。2030年までに市場シェア15%というCAP 15戦略の目標達成においても中核的な施策となる」と強調している。
欧州小売業界は現在、米アマゾンなどの巨大プラットフォームによるプレッシャー、エネルギー価格の高騰、消費者の節約志向など複雑な環境に直面している。カルフールとコーペラティブUによる新連合は、欧州域内の小売業再編の呼び水となる可能性を秘めていると言えよう。