フランス小売大手カルフールCEOが南米産の牛肉をフランス国内で排除するとSNSで発言したことをきっかけに、ブラジル食肉業者や農業当局と衝突している。
事の発端は11月20日、カルフールのボンパール・CEOが「農業界と連帯して、カルフールはメルコスール産の肉を売らないようにする」との趣旨の声明を発表したことに始まる。
ブラジル農業関係者を敵に回す
メルコスールは、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイなど南米諸国による地域経済連合で、関税の撤廃や貿易の自由化が進められている。欧州連合(EU)との間での自由貿易協定は、特に農業分野での貿易促進を目的としている。しかし、EU内では、域内農業に与える影響や環境保護への懸念が強まっており、フランスでは反対の声も根強い。
カルフールは、フランス国内外で展開する小売チェーンとして、フランス産およびブラジル産の農産物を主力商品とし、両国農業の発展に寄与している。しかし、メルコスールとのFTAが締結された場合、EU内の農産物市場にブラジル産の商品が増加し、フランス農業が競争圧力にさらされる懸念もある。
ブラジルニュースサイトg1によれば、カルフール・ブラジルは、ブラジル国内の店舗では、引き続きブラジルの精肉業者から肉を仕入れる方針を堅持する方針。だが、国内の大規模な食肉処理場がカルフールをボイコットし、食肉販売が一時中断されたもよう。ブラジル農業省(MAPA)など当局も、カルフールの発表を厳しく批判した。
カルフールの声明も効果なし?
これを受け、11月26日にカルフールはCEO発言を撤回して謝罪。さらに、緊急声明を発表して、「ブラジルの店舗で扱う肉の大部分はブラジル産であり、この方針を継続する。50年にわたるブラジル農業セクターとの関係から、ブラジルの農業と畜産の専門性と情熱を日々目の当たりにし、これを高く評価している」と言明した。
だが、g1によればブラジル下院は11月27日、声明は不十分として、国家間の環境相互主義を確立するプロジェクトに対する緊急要請を承認したという。署名国が同等の環境保護措置を講じない限り、ブラジル製品の輸入を制限する条項を含む国際協定をブラジル政府が提案または署名することを禁じるというもの。
紛争の着地点はまだ見えない。