イオンリテールは、5月29日から順次、従業員が店舗で利用する新しい端末「オールインワンデバイス」約5万人分を関東・北陸信越・東海・近畿・中四国の390店舗に実装する。本年度は1万台を導入。26年度中に導入完了を目指す。
同社ではこれまで「AIカカク」や「AIワーク」、「Maiボード」など、店舗での体験価値や生産性を高めるシステムを導入してきたが、これらはいずれも別々の端末で操作するため、従業員は5種類の端末を使い分ける必要があった。また、これらのシステムを使用する度に店舗とバックヤードを行き来したり、端末を探してログインしたりといった手間もかかっていたことから、これらのシステムを一つに集約したデバイスを開発、店舗への実装を決めた。新端末は「文字スキャン」「一括スキャン」といった高性能スキャン機能を備えており、食品の期限チェックやスキャンチェックなどの固定業務を大幅に削減するとしている。
合わせて6月からは従業員の業務を支援する「従業員アプリ」の実証運用も開始する。アプリは、「オールインワンデバイス」に搭載するもので、ワークスケジュールの提示からあらゆる業務遂行支援、業務完了の連絡まで勤務時間の情報のやりとりをすべてカバーする。1回のログインで複数システムを横断的に利用できるため、わずらわしさがなく、作業の効率化にもつながる。

また、生成AIを活用した従業員チャットボットのAIアシスタントを含み、これを使うことで、例えば、顧客からの質問を受けた際、その場でデバイスで確認して回答することができる。また、品出しをする場合も、商品の売り場の位置をデバイスで確認できるため、経験の浅い従業員でもスムーズに作業を行なえる。
同社の山村卓也 IT企画本部長は、「昨年度は、繁忙期などに店舗のバックオフィスの従業員が売り場に出ることで、外部の人員に頼らない体制を敷き人件費の抑制に努めた。レジ改革はじめシステム導入で生産性も高めているが、今後も賃金の上昇は見込まれることから、長期的な生産性の向上が必要と考えた」とデバイスとアプリ導入の背景を説明。さらに、「従業員の働きやすさとそれを叶えるシステムは、当社の最優先事項であるお客様ニーズへの対応を強化するベースになる」として、単なる効率化ではなく、顧客満足度の向上につながるシステムであることを強調した。