セブンイレブン・ジャパンは8月1日、「お店で揚げたカレーパン」(税抜149円)が2023年累計で7698万7667個を売り上げ、「最も販売されている揚げたてカレーパンブランド」としてギネス世界記録に認定されたと発表した。セブンがギネス世界記録の認定を受けるのは初めて。カレーパンをフックに、同社が展開を強化する「出来たて商品」の認知を広げるとともに、今後の開発・販売強化にもつなげたい狙いだ。

ギネス世界記録公式認定証の贈呈式の様子。左端が米田昭彦商品本部FF・冷凍食品部シニアマーチャンダイザー、左から2番目が矢島弘樹執行役員オペレーション本部副本部長

「お店で揚げたカレーパン」は店内で調理し、カウンターで展開する新しいタイプのパンだ。21年6月に東京・神奈川と東海エリアの一部店舗でテスト販売した後、22年12月から全国展開を始めた。30種類以上のスパイスをブレンドしたカレールウをサクサクの生地で包んだ出来たてのおいしさが好評を得ている。

お店で揚げたカレーパン

 揚げカレーパンをギネス世界記録に申請した経緯について、商品本部 FF・冷凍食品部の米田昭彦シニアマーチャンダイザーは、「展開当初から非常に売れ行きがよく、『これは看板商品になる』という手応えがあった。頑張って売り込んでくれている加盟店さんを後押しする意味でも、販売初年度に何か記録に残したいと思って取り組みを決めた」と語る。

 揚げカレーパンの購買層は、40代男性を中心に、女性やお年寄りまで幅広い。コロッケやチキンといった揚げ物が昼・夕方によく買われるのに対し、揚げカレーパンは特に朝の購買が多いという。おにぎりや飲み物と一緒に主食として買われることが多く、また「衝動買い」や「揚げたて」といったFF的なニーズによって買い求められることから、「ペストリーのカレーパンとのカニバリがほぼない」(米田シニアマーチャンダイザー)のも特徴だ。

 同日、揚げカレーパンの製造を行う「武蔵野フーズ カムス 第2工場」にてギネス世界記録の公式認定証贈呈式が行われ、その後、工場の内部が報道陣にも紹介された。

武蔵野フーズ カムス 第2工場

 同工場は元々、「金の食パン」などを製造するパンの専用工場として稼働していたが、揚げカレーパンの展開にあたり、製パン設備・製ルウ設備・冷凍設備が一体となったインフラを新たに導入した。現在では、同工場で確立したモデルを4拠点に水平展開し、全国の店舗に揚げカレーパンを供給している。

「苦労したのはカレーのスパイスの風味を引き立たせること。30種類以上のスパイスを段階的に投入するなどして調整している。またお店で最終的に揚げるため、その前に工場で揚げてしまうと生地が油を吸いすぎてしまう。工場では揚げずに特別な“加温”の行程を組んでいる」(米田シニアマーチャンダイザー)

カレーのフィリングを作る工程
練りたての生地が流れていくライン
フィリングを生地の上に載せていく
パン粉付け
1時間ほど寝かせる
企業秘密の加温処理を経たカレーパン
冷却しおいしさを閉じ込め、包装。店舗へ出荷される

 セブンは目下、「淹れたて」「焼きたて」「揚げたて」などの「出来たて商品」の展開を強めている。例えば、「セブンカフェ スムージー」は今夏、導入可能全店の1万8000店に拡大。焼成パンは今年度中に3000店まで広げる計画だ。同社は揚げたてパンもこの強化品目の一つに設定。いち早く火が付いたカレーパンを牽引役に、カウンターで売り込む新カテゴリーの販売に弾みをつけたい考えだ。

 矢島弘樹執行役員オペレーション本部副本部長は、「まずは衝動買い、それからおいしさを知ってもらい、目的買いにつなげていきたい」と話す。これに向け、8月7日~11日の5日間、揚げカレーパンの「税抜29円引きセール」を実施する。ギネス世界記録認定もアピールしながら、より多くのお客に揚げたて商品の周知を図る。

 新商品の開発も加速する。米田マーチャンダイザーは「カレーパンとはまた違う揚げたてパンもごく近いうちに一部エリアで販売を始める」と予告。今までになかったよりフレッシュな商品の提供で、セブンはコンビニの食の可能性を押し広げるべく模索している。