イオンは新物流センター「イオン福岡クロスドック(XD)」(福岡市)を拠点に、イオン九州、イオングローバルSCM、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(以下、CJPT)と取り組む、物流問題の解決とカーボンニュートラルの両立を深化させる。

 イオンはかねて、物流の最適化を目指して仕入れから販売までの各流通段階における効率改善に取り組んできた。また、トヨタ自動車ら自動車メーカー4社が参画するCJPTは、物流効率化と車両電動化を二軸に、輸送業の課題解決やカーボンニュートラル社会の実現を目指している。

 両社は2021年4月から南大阪RDCで協業を始め、イオンが持つ小売業の物流ノウハウと、CJPTのTPS(トヨタ生産方式)を組み合わせることで、トラックの総走行距離の10%効率化、CO2排出量の10%削減などを実現した。22年9月からは九州エリア全体で、卸事業者や仕入先まで含めた物流ネットワーク全体の最適化に取り組んでいる。

 そして、7月24日からイオンの新物流センター「イオン福岡XD」が本格稼働することに伴い、TPS思想を取り入れた作業効率化や自動化設備導入による物流作業の自動化、リアルタイムデータの活用による最適配送計画システムなどに取り組む。同時に、燃料電池(FC)小型トラックの導入により、30年までにCO2排出量35%削減を目指す。拠点となる「イオン福岡XD」は、約50年稼働したイオン福岡ロジスティックセンターを建て替えたもので、常温・低温一体型の複合物流センターだ。

 7月22日に行われた記者会見で、イオン執行役物流担当の手塚大輔氏(写真中央右)は「物流を支える車両連合であるCJPTの高い志と強い思い、地域社会を守っていくというイオン九州の小売業としてのプライド、志が共有できたからこそ、協業がしっかりと発展してきた」と力を込めた。

 また、CJPTの中嶋裕樹社長(写真右)は「TPSはもともと、誰かの仕事を楽にしたい、どうやれば楽にできるか、という思想からスタートした」と述べた上で、TPSを生かした作業効率化の具体例として「たとえば折りたたみコンテナは定型ではないので中身がスカスカになるケースもあったが、作業者が同時に四つの箱を見られるように台車のレイアウトを変えたことで、折りたたみコンテナの積載効率を上げ、最終的にはトラックの積載効率向上につながった例もある」と胸を張る。

 九州の小売業では、イオン九州やトライアルホールディングスなど15社が参加する「九州物流研究会」において、企業の垣根を越えて各社のセンターを見に行ったり事例を共有したりしている。イオン九州取締役相談役の柴田祐司氏(写真左)は、「この新センターについても、CJPTと取り組む環境車両についても、物流研究会と一緒になってやっていけば、九州全体が良くなっていく」と期待を述べた。

 イオンとCJPTは今後、仕入先とのデータ連携による物流の効率化や、幹線物流(長距離輸送)におけるダブル連結トラック活用・共同輸送など、取り組みをサプライチェーン全体に広げていく構えだ。