野村不動産は5月30日、東日本旅客鉄道と共同で推進中の大規模複合開発「芝浦プロジェクト」の街区の名称を「ブルーフロント芝浦」に決定したと発表した。それに先駆け同日、東京・港区の「東京ポートシティ竹芝」で記者発表会を開催した。
「芝浦プロジェクト」は、浜松町ビルディング(東芝ビルディング)の建替事業として、区域面積約4.7ha、延床面積約55万㎡の敷地内に、高さ約230mのツインタワー(S棟・N棟)を建設する大規模開発だ。地下3階〜地上43階建てのS棟、地下3階〜地上45階建てのN棟の両タワーには、オフィス・ホテル・商業施設・住宅が入居。S棟は2025年2月、N棟は30年度に竣工予定となっている。
本プロジェクトの特徴は二つ、東京の働き方を変える「柔軟なオフィス」と「都心とベイエリアをつなぐ」まちづくりにある。
野村不動産の松尾大作代表取締役社長は、進行中の取り組みをいくつかのポイントに絞り説明した。

野村不動産の松尾大作代表取締役社長がプロジェクトの概要を説明した
その一つ「新たなオフィスの価値創造」では、25年2月竣工予定のS棟のオフィス部分にフォーカスした。S棟は、1〜3階が「ショップ&ダイニング」、7〜33階が「オフィス」、35〜42階がラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が入居する予定だが、中でもオフィスは本プロジェクトの肝だ。
目玉となるのが、28階、約1500坪の面積を持つ共有スペースで、芝浦の自然を生かしたウェルビーイングな働き方「TOKYO WORKation」をテーマに、それに基づいた多様なワークスペースを用意した。
フロア内には、空と海の解放感を体験できるテラス付きのラウンジや、ミーティングや発表会などに使えるバケーションエリア、フィットネスやヨガ、岩盤浴が体験できるウエルネスエリアなど、個人・チームの用途・気分に合わせたスペース利用で柔軟な働き方を提案する。また、夜には酒など食物販も提供し、歓送迎会などの場としても提供する。なお、これに伴ない、ブルーフロント専用のアプリも開発。共有スペースの予約・決済機能はもちろん、用途や気分に合わせた共有スペースの検索ができる機能も設け、「ワーカー一人ひとりに寄り添う」(松尾社長)ツールとした。現状、オフィス層のリーシング状況については、入居予定の野村不動産グループ各社を含み約7割が内定。外資系の企業の引き合いが多いという。
もう一つ、「ベイエリアにおける船舶ネットワークの活性化」については、ベイエリア全体の回遊性を高めるべく、5月22日からテスト運用をしている舟旅通勤「ブルーフェリー」を紹介した。晴海〜芝浦・日の出区間において実施しており、ビジネス街の芝浦と住宅拠点の晴海を舟を使って5分で結ぶ。街区「晴海フラッグ」(中央区・晴海)の住人の最寄り駅は、バス「晴海BRTターミナル」を除くと、大江戸線「勝どき駅」のみで徒歩20分ほどかかる。しかし今後、ブルーフェリーが出航するとなれば、エリアからすぐの船着き場「晴海5丁目ターミナル」から「日の出船着場」へ行き、ゆりかもめ「竹芝」「日の出」、JR「浜松町駅」などの利用が広がる。今後は、乗客数などの利用状況を観測し、出航体制を精査していく考え。
発表会の冒頭、挨拶に立った野村不動産ホールディングスの新井聡代表取締役社長は、「ベイエリアの可能性を切り開く」と話し、「芝浦だけでなく、東京ポートシティ竹芝を開発した東急不動産、浜松町駅西口地区開発計画を推進している世界貿易センタービルディング、この三つの地区の連携によって浜松町駅周辺の活性化を図る」と意気込みを語った。また、ロンドン、ニューヨークなど、世界の都市を見たとき、ベイエリアは街の共創力を高める一つのファクターだと意見。野村不動産は、東京の働き方を変え、街、ビジネスの拠点をベイエリアへと移し替えを図る。
<冒頭写真、左から、東日本旅客鉄道竹島博之執行役員マーケティング副本部長、 野村不動産ホールディングスの新井聡代表取締役社長 、 野村不動産の松尾大作代表取締役社長>

野村不動産ホールディングスの新井聡代表取締役社長 は、 3地区連携で浜松町エリアの活性化を図る

「芝浦プロジェクト」の街区の名称を「ブルーフロント芝浦」に決定した

28階、約1500坪の面積を持つ共有スペース から見える景色

28階では、 芝浦の自然を感じられる 開放的なテラスも用意する。

晴海フラッグ(写真)の住人は、船着き場「晴海5丁目ターミナル」 から船を使って通勤することもできる