価格交渉のすそ野は広がりつつあるが、価格転嫁にはつながっていない状況が続いている。
これは、中小企業庁が今年9月に実施した価格転嫁に関する調査の結果。中小企業庁では、毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に合わせ、価格交渉や価格転嫁に関する調査を実施している。受注企業が、実際にどの程度価格交渉や価格転嫁ができたかを把握するのが狙いで、5回目となる今年9月では、アンケート調査と下請けGメンによるヒアリング調査を実施。アンケート調査では30万社を対象に実施し、3万5175社から回答があった。一方、ヒアリング調査は、約2000社を対象に実施した。
今回の調査では、「発注企業の側からの申し入れで交渉が行われた」が、3月の7.7%から14.1%とほぼ倍増したほか、「コストが上昇せず、価格交渉が不要である」とした企業も、3月の7.7%から16.4%と2倍以上に拡大した。また、価格交渉について、「希望したが行われなかった」が、3月の17.1%から7.8%へと半分以下に減少した。こうした点から、中小企業庁では、「受注企業が価格交渉できる雰囲気が醸成されつつある」と評価した。
一方、価格転嫁については、依然、厳しい状況が続いている。
コスト全体の価格転嫁率は、3月の47.6%から45.7%へと減少、「一部でも価格転嫁できた」の割合も68.1%から63.1%に減少した。これは、「コストが上昇せず価格転嫁は不要」とした割合が16.2%と3月(8.4%)のほぼ2倍になったこともあるが、「100%転嫁できた」という企業の割合も20.6%から17.0%に減少しており、大半の企業は十分な価格転嫁が行われていない状況だ。
中でも厳しいのがトラック運送業だ。価格転嫁率の業界順位は、3月、9月ともに全27業種中27位。さらに、「価格交渉は行われたが、全く転嫁できなかった」企業の割合も29.2%とワーストワン。2024年問題を間近に控え、安定した物流の維持には、トラック運送業界のコストの適切な転嫁が欠かせないが、実際はそれが十分にできていない状況だ。