10年後には20~30代となり、経済活動の主役へと躍り出る「Z世代」。これまでの世代と全く異なる価値観、消費の特徴を持っていると言われ、アプローチは容易ではない。本連載では、Z世代にホットなモノ・コトを取り上げ、展開する企業の戦略や、なぜZ世代に刺さっているのかを調査。見えづらいZ世代のニーズや生態を掘り起こすとともに、 若年層から巻き起こる“ニュートレンド”が、今後の生活や消費の“ニュースタンダード”になり得る可能性を探る。

若年層の”飴離れ”を食い止めよ

「透明なハートで生きたい」

 一見、ポップソングのワンフレーズのようだが、さにあらず。これは今年5月、菓子メーカーのカンロが発売した飴の商品名だ。ターゲットをZ世代と定め、現役高校生の声や意見を取り入れながら開発。商品名はもちろん、フレーバー、パッケージに至るまで、Z世代の感覚に寄り添ったコンセプトが受け入れられ、一躍ヒット商品となった。

「透明なハートで生きたい」

 カンロがZ世代向けの商品開発に踏み出したきっかけは、ひとえに若年層の“飴離れ”にある。飴やグミ、錠菓などを含む「キャンディ市場」は、新型コロナの拡大で一時全てのカテゴリーが減少したものの、22年にはグミ市場の伸長が牽引し、再び増加に転じた。ただし飴市場は微増にとどまり、コロナ前に戻っていない状況がある。加えて顕著なのが、若年層の購入が目に見えて減っていることだ。飴の年代別購入規模を見ると、階段のように歳が若くなればなるほどゆるやかに購入が減る傾向があるが、20代から10代でもう一段ガクンと落ち込みが見られる。

 現状、カンロは飴市場の20%以上のシェアを占めるトップメーカーだ。しかし、だからこそこうした状況を重く捉えていた。同社は若年層の飴離れの原因について、幼少期に飴に触れる機会が減っている=「飴の原体験」が薄れているからではないかと仮説を立てた。実際、飴は一昔前まで家の置き菓子の定番だったが、菓子のバリエーションが増えた現代ではなかなか選ばれにくくなっている。またかつてはあちこちにあった駄菓子屋も減少、最近では喉詰まりなどへの配慮から遠足時に飴の持参が禁止されるケースも出てきている。

「のどが痛くなった時にのど飴をなめる、人からもらって飴を食べるということはあっても、自分から積極的に飴を手に取る機会が若い人ほど減っている」。こう指摘するのは、コア事業本部ピュレグミ・カンデミーナブランド部の河野亜紀課長(冒頭写真)だ。「このまま若年層の飴離れが進めば、市場全体の縮小にもつながりかねない」。その危機感は切実だった。

 こうした状況を打破すべく、カンロは21年頃からZ世代向け商品の開発強化に動く。PLAZAとコラボし、22年2月に発売した「EMOTIONAL CANDY」は、感情の高まりを意味する“エモ”に着目した飴だ。音楽プレーヤーのようなパッケージを打ち出し、フレーバーも架空の楽曲をイメージした「風をきってつぎへ」 「恋だったなんていえない」 「夜よ、おわらないで」の3種をラインアップ。ECサイトでは発売からわずか10分で完売するなど大きな話題となった。

「EMOTIONAL CANDY」

 こうした成果を踏まえ、カンロは施策を一歩前進。22年8月、飴のリブランディングをテーマとする「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」を立ち上げ、Z世代に今一度飴の価値を伝える取り組みを始めたのだ。同プロジェクトには、飴の開発部門のみならず、各ブランドから垣根を越えて人材が結集した。その中でピュレグミの部門から参画した河野氏がプロジェクトリーダーとなり、取り組みを推し進めていった。

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