床面の清掃不足が労災につながる可能性も
食品製造を取り巻く衛生管理体制は課題に直面している。惣菜の需要が毎年伸びている半面、現場の人手不足が一段と深刻化。外国人労働者の増加や従業員の高齢化とともに、環境整備、HACCPへの対応を含む衛生教育がより求められている。
こうした課題に対し、サラヤは安全・安心な衛生環境の持続を目指し、従業員が統一された基礎教育を受け、平準化された知識習得者による衛生管理体制創りを推進している。実際に惣菜・生鮮部門の課題解決のため、サラヤは直近の半年間において、約20社のスーパーマーケットのバックヤードを訪れ、現場の実態調査を行った。
その調査結果により「清掃の時間が十分に取れない」「衛生知識や清掃方法の教育が行き届かずに正しく運用できない」ことが大きな課題と改めて確認した。さらに同調査の惣菜部門への「大変だと感じる清掃作業は」という質問に対する回答では、「床」「フライヤー」「排水溝・グリストラップ」の順に挙がった。いずれも時間と労力のかかる作業で、特に「床」は人が少ない中で作業場がかなり広く、手間だけでなく、長時間かがんで腰が痛くなるなどの作業負担が増している課題が浮かび上がった。また、食料品製造業の労災原因では31%が床での転倒(横浜北労働基準監督署資料)であり、油や汚れなどの床面の清掃不足が事故につながる可能性も高いことが懸念されている。
そこでサラヤは、労働環境改善を目指し、機器メーカーと協力し、床面全自動洗浄システム「フォーミングクリーンシステム」を共同提案している。本製品は調理場内に設置した専用配管から泡状の洗浄剤を吐出し、調理場内全体や手の届きにくい加熱調理機器類、作業台の床面に行き届かせ、毎日の洗浄・すすぎ作業の効率化・省力化をサポートする。バケツなどで希釈した液浄剤を床にまく作業やホースでのすすぎは必要ないことから、一部門で1日約10分以上の時間を短縮し、年間約60時間の作業時間削減につながる。適量の洗浄剤が自動希釈され、微細な泡で汚れを吸着し、人の手で洗浄剤を撒いた時に比べて洗浄効果を高め、使用量を抑えた運用ができる。さらに、サラヤは顧客ニーズへの新たな取り組みとして、セミオート仕様の簡易発泡装置も考案し、提案の幅を広げている
もう一つの大きな課題である衛生教育に対しては、従業員教育の動画配信サービス「おしえて!さらちゃん」の提案を行っている。1コンテンツ2~3分程度の短時間動画を繰り返し学ぶことができ、必要な動画を自由に選べることが特徴だ。また店舗ごとの共通IDで管理も簡単だ。先ほどの課題に挙がった衛生管理に必要な基礎知識から薬剤の種類と使い方まで洗剤メーカーならではの内容を網羅。「字幕表示で多言語にも対応しており、外国人の方でも同じ情報を効率良く素早く学べる仕組みとなっています。衛生教育の標準化ツールとしてご案内しています」(サニテーション事業本部食品衛生部の橋本典明統括部長)。