セブン&アイ・ホールディングス(HD)は3月9日、イトーヨーカ堂の祖業であるアパレル事業からの撤退と、追加の店舗閉鎖を決めた。肌着を除く、婦人、紳士、子供の衣料品カテゴリーの販売を止め、食品中心の事業モデルにシフトする。店舗は地方を中心とする採算性の低い店舗を閉め、肥沃な首都圏市場にフォーカスする。

 同日の取締役会で決定したグループ中期経営計画の見直しの中に盛り込んだ。ヨーカ堂は2023年2月期第3四半期時点で営業損失56億円を計上。前年同期の24億円の損失に続き、2期連続の赤字となった。23年2月期期末業績予想は10億円の増益を掲げているが、電気代高騰のインパクトが大きく、今期も引き続き厳しい状況にある。こうした中で、従来よりもさらに踏み込んだ改革を迫られたかたちだ。

 同日開かれた説明会の中で井阪隆一社長は、幾度の構造改革を行いつつ結果を出せなかったことについて「事業ドメインとエリアを絞りきれなかったことが構造改革の効果が限定的となった大きな要因」と反省の弁を述べた。

 閉鎖店舗の詳細は非公開だが、店舗数は前期末の126店舗から中計最終年度の25年度までの3年間で33店を閉鎖し、93店舗となる見込み。また衣料品売り場の今後については、「テナントとそれ以外を含め、個店ごとにマーケットニーズを見て判断していく」(山本哲也社長)という。

 合わせて今後の成長戦略として、首都圏におけるヨーカ堂、ヨーク、シェルガーデンの3社を事業再編し、ブランドを統合して、シナジー創出、運営効率化、また新設するプロセスセンターやセントラルキッチン、ネットスーパー専用センターなどのインフラを活用することで、利益成長を目指す。時間軸は3年で、25年度にヨーカ堂、ヨーク、ガーデンの3社でEBITDA550億円、ROIC4%以上の目標を掲げた。

 また4月1日付で、伊藤順朗取締役常務執行役員が代表取締役専務執行役員に昇格し、スーパーストア事業を管掌する。また3月1日付でヨークの会長となった石橋誠一郎セブン&アイHD常務執行役員がスーパーストア事業統括を兼務する人事も発表された。創業家と石橋氏のタッグで首都圏での成長戦略を実現できるか、ヨーカ堂にとってはこの3年が最後の正念場となりそうだ。