九州を地盤にした小売業態の実験場。イオン九州はそんな役割を担っているのではないか。イオン九州を存続会社にして、GMS、SM、DSのビッグが合体、新生イオン九州が誕生したのは、2020年の9月。中期計画では、食の強化、非食品の専門化を掲げ、GMS、SMの改革を促進。そして、今年9月ウエルシアとの合弁会社を設立、SM、ドラッグストア両業態の未来像を探す壮大な実験も開始した。(インタビュアー・栗田晴彦)

イオンの惣菜をブランドにしていく

 ――食品の値上げが相次ぐ中で、購買頻度の高い商品を生活応援売価で提供する政策を続けています。

 柴田 最近皆さんよく「価格転嫁」と言われるけど、僕は「価格転嫁」という言い方自体がものすごく気に入らない。なんで原材料費が上がったら、すぐに商品の価格が上がらなきゃいけないんですか。我々小売業はオペレーションを簡素化したり、商品の調達方法を工夫したり、コストを下げる努力をしながら、この商品はこの価格だったら売れるよねという値段を付けて売っている。商売って要は企業努力をしながら、お客様にバリューを感じていただける価格でお売りすることなんですね。なのに何が価格転嫁なんですか。価格転嫁、転嫁とおっしゃるけど、じゃあ本当にそのまま全部転嫁していっていいんですかと逆に問いたいですね。

 ――つまり小売業にとって、価格はそれだけ重要なものだと。

 柴田 だから同じ商品だったら、原材料費が上がっても今の価格で売り続ける努力をしなくちゃいけない。全部は無理でも、使用頻度の高い商品についてはその努力をしなくちゃいけない。それが消費者のために大事なことだと僕は思っているので、1000品目を3カ月間お値打ち価格で提供する「本気の価格」や週替わりでお安くする「今週のおすすめ品」を頑張って続けているわけです。もちろんそれで粗利が下がることはあります。でもそれは他で補えばいいわけで。実際、当社はこの上期は粗利益率が前年同期比で若干低下しましたが、営業利益は21.1%増になりましたから。

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