地方百貨店の衰退が言われて久しい。その地方百貨店の抜本的改革に取り組んだのが松山三越だ。それは小手先のリニューアルではなく商圏を調べつくし、松山三越の百貨店としてのあり様を探し出すもの。浅田前社長へのインタビューは3月26日土曜日、すでに三越伊勢丹本社への異動が決まっていたが、その語り口に改装にかけた情熱はどれほどか、痛いほど伝わってきた。(インタビュアー・栗田晴彦)
立地はいい、やりようはあると考えた
――百貨店の殻を打ち破る大胆な発想で、松山三越を全面改装しました。改装後の客足はどうですか。
浅田 昨年12月に全館開業して以降の入店客数は、改装前の約250%で推移しています。やはり新規のお客様が相当増えました。従来は年代層が上の方が多かったんですが、学生さんとかヤングファミリーとか、今まで見たことのなかった(笑い)お客様が沢山来られるようになって。中身をこれだけ大きく変えましたのでね。以前は1階が化粧品と雑貨で、2階が婦人服でと、ごく普通の百貨店だったんですけど。
――それが今は1階がフードホールで、上層階は何とホテル(笑い)。
浅田 ただここは、もともとそういう方がいらっしゃったんです。近くに大学や企業の支社もあるので、三越がある大街道商店街は若い方からご年配の方までバランスよく歩いておられた。それに加えて観光客も多いんです。目の前が松山城だし、道後温泉も車で5分ぐらいだし。私がここに来た18年4月はまだコロナ前でしたから、外国人観光客もかなり増えていたんですね。