D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドに売り場を貸して、売り場運営や販売促進のサポートをする、体験型の「売らないテナント」が大手百貨店に広がっている。

 先鞭をつけたのは脱百貨店を進める丸井グループで、2020年8月に新宿マルイ本館1階の一等地に、米国発の体験型店舗「ベータ(b8ta)」を誘致したのが始まりだ。オーダースーツの「ファブリックトウキョウ」やフリマアプリの「メルカリステーション」などに加え、スタートアップ企業も続々入店している。売り場運営や接客は主に丸井のスタッフが担当し、出店者は家賃や出店手数料を支払う仕組みになっている。丸井は24店舗の商業施設を展開しており、合計売り場面積は約40万㎡。現在このうち10%が「売らないテナント」だが、これを25年度末までに30%まで高める大胆な構想を描いている。

 売り上げの良好なブランドや商品を入れようとすると、どの百貨店やSC、ファッションビルも同じような品揃え、テナント構成になってしまう。その結果、若者を中心にお客は自分の個性に合った商品を探し、ネット企業に流出。また、リアル店舗で商品を確認し、価格の安いネットで買う「ショールーミング」も増え、リアル店舗の売り上げ不振の要因にもなっている。オンラインとオフラインを融合したプラットフォームを作ることで、問題の解決策の一つにしたいと動き出す企業が増えている。一方、D2Cもサイトの乱立で、認知度をどう高めていくかが課題になっており、多数の消費者が来店する百貨店やSCなどに出店し、認知度を高めようとする動きがある。

 民間の調査機関によると19年D2Cの市場規模は2兆円を突破、25年には3兆円に達するとの予測もある。当初、アパレルや化粧品業界で始まったD2Cだが最近では食品、インテリア、家電、ペットフードなど幅広い業界に広がっている。D2Cブランドは原則実店舗を持たず、SNSで消費者にアプローチして、ECサイトで販売するビジネスモデルなので、比較的少ない資本で起業が可能だ。百貨店出店により消費者とのリアルなタッチポイントが得られるメリットは大きい。

(トップ画面は、D2Cスタートアップを支援する新会社を立ち上げた青井浩社長<右から3人目>と加藤浩嗣新会社社長<同4人目>)