伊藤忠食品 岡本均社長/ビジネスコンテストでコミュニケーションを円滑にした
昨年はコロナ特需で取引先からは商品の安定供給を要望されましたが、特需がなくなった今期は再び価格対応が求められるようになりました。今後もこの傾向が続くと見ています。ですから単に見積もり合わせではなく、売れる仕掛けづくりができるかどうかが重要になると考えています。
22年度までの新中計3カ年の三本柱は従来とは異なる発想で考えないといけませんが、新しいことは急に思いつかないもの。前期はリモートワーク導入で移動がなくなって、ルーチンワークに追われることも減少、自由にものを考えられる時間が増えました。リモートで同じ部署の人といくら会議を開いてもそのうち話題がなくなる。そこで、これを機に新しいアイデアを生み出してもらおうと懸賞付きのビジネスコンテストを開催したのです。
このコンテストではチームを自由に組んでいいというルール。同じテーマで参加するのであれば違う部署のメンバーでもいい。社内にはM&Aに詳しい人などいろんな人がいる。その結果、これまで話す機会がなかった他部署の人とコミュニケーションが生まれました。発想の転換やコミュニケーション活性化が図れたので、これも、売れる仕掛けづくりにもつなげたいと考えています。
日本酒類販売 田中正昭社長/「ヒト」「モノ」「コト」を育てトレンドに対応
ここへ来て東京には4度目の宣言が発令、外飲みから家飲みへ、というトレンドは今後もしばらく続くと思います。ただ、家で飲むのはお徳用や安いお酒ばかりかというとそんなことはない。せっかくだからちょっと高いものを家で飲もう、という需要も当然あります。今は一升瓶下げて家に帰る人は少なく、女性を中心に小さなカップや容器のお酒にシフトしている。メーカーさんもそれに合わせた商品を開発しているので、我々はそれを受け止めて、求めるお客様に最適な提案をしていくことが今まで以上に重要になっています。
そのベースとなるのが、「ヒト」「モノ」「コト」です。我が社の社員(ヒト)には、ぜひお酒の専門家になってほしい。商品(モノ)に精通し、目利きとして提案していく力を持ってほしい。それには「コト」消費の動向を踏まえることも重要。今は苦戦する業務用ですが、ワクチン接種が広がった暁には、イベントなども企画しながら需要喚起を図っていきたい。
今後を見据えては日本酒の輸出にも力を入れていきます。北米などはまだ需要が落ち込んでいますが、中国では既に回復の兆しも見られる。引き続き海外進出に意欲のある蔵元さんをサポートしていけたらと思っています。
ヤマエ久野 大森礼仁社長/SDGsでも小売業の方針に沿った対応が求められる
新型コロナの小売業への影響といっても、千差万別です。住宅立地の店が巣ごもり需要を取り込んで好調な一方、オフィス街の店舗は、在宅勤務が増えた影響で売り上げが激減している。同じチェーンでも、店舗の置かれた環境により状況は異なります。また、コロナ下で価格志向が強まるという声もありますが、こちらも、一概には言えません。去年並みの売り上げを作ろうと価格訴求を強めるところもあれば、利益を確保するために、安売りは控えるところもあるからです。したがって我々卸は、得意先ごとの営業方針や店ごとの状況を理解した上で、相手にとって最適な提案をすることが重要になります。
そうした対応が必要なのは営業面だけではありません。最近は、「得意先との会議では、SDGsの話しか出なかった」というほど、社会や環境の負荷軽減の取り組みを重視する小売業も出てきました。当然、取り引きをする卸売業にも、食品の廃棄ロス削減、CO2排出量削減などの対応が求められますから、我々も商売だけでなく、SDGsなどについても小売業の方針を理解できないといけません。さらに、メーカーと一緒に取り組むなど、取り引き全体を通じた対応も必要になるでしょう。
トーホー 古賀裕之社長/デジタル化を推進し筋肉質な企業に変わる
今期もコロナが続くと覚悟はしていましたが、予想以上に長引いていると感じています。回復の切り札となるワクチン接種率が全人口の60%を超えるのは、栃木県が接種を終える来年1月と言われています。我々の取引先で大きいのは外食のほかにホテル関係。こちらは今年10月くらいには動きが戻らないとさらに厳しくなると心配しています。
だからといって嘆いてばかりもいられません。全社でデジタル化の推進に取り組んでおり、C&C事業ではECサイト開設を準備中です。実はトーホー・C&C静岡でECサイトを展開していたのですが、トーホーキャッシュアンドキャリーへの統合を機にC&C事業全体でECに取り組むことにしたのです。リアル店舗のA-プライスと一体となって効率良くやっていきます。
業務用卸は小売り向け卸と比べてアナログなことが多い。世の中がニューノーマルに舵を切っている以上、我々もそれに合わせて変えないといけない。オンライン営業やお客様向け情報誌のデジタルブック配信などを進めてきましたが、今年3月には公式インスタグラムも開設。これにECサイトも加わることで、厳しい経営環境に耐えられる筋肉質な企業に生まれ変わりたいと思っています。