スギヤマの新鮮な根菜類を扱うスーパーマーケット(SM)が増えている。青果卸のスギヤマは2017年に埼玉県日高市の本社工場内に低温冷蔵庫を竣工。ごぼうを中心とした根菜類の長期保存によって年間の取引量が拡大し、売り上げは40億円超までに右肩上がりで成長。ごぼうを中心とした差別化戦略について杦山国弘代表取締役に聞いた。

青果卸・スギヤマ 杦山 国弘 代表取締役

青森県でごぼうの自社生産を始めました

 ――青森県生産量日本一のごぼうをメインに扱っています。ごぼうを扱うのはなぜですか。

 杦山 もともと当社は1946年に杦山種苗店という種屋として創業しました。中でも、ごぼうは収穫のために深くまで掘るので手間がかかり収穫には人手が必要でした。特殊な機械が必要なことから、東京都武蔵村山市、埼玉県など関東の生産者さんにごぼうの種(滝野川ごぼう、現在の長根種の先祖的な品種)を配り、栽培を農家さんにお願いし収穫を請け負い、購入していたようです。ごぼうは、一度収穫すると5年空けろと言われるくらい、連作が難しい作物で広大な面積も必要なことから、産地が移動し関東の生産者は徐々に減少。当社の得意先様もごぼうを取り扱うSMの青果や惣菜、生協、コンビニ、惣菜店、漬物メーカーなどに拡大。これらの販売ボリュームの大きい得意先様のバイヤーさんからの要望もあって、質の高いごぼうを安定的に供給できる生産拠点を全国で探しました。

 ――得意先が納得できる新たな生産地は見つかりましたか。

 杦山 夏季冷涼な気候で、広大な面積、雪が積もる前の11月頃までに収穫する青森県が最適地でした。青森県産は香りと風味がよく、シャキシャキした高品質なごぼうとして市場から評価も高く、全国のごぼう生産量15万t前後のうち3割強の5万t弱を生産と全国でナンバーワンの生産地となっています。ただ、当初、スギヤマという社名が青森県の生産者さんには知られていなかったので、スギヤマってなんだと、商品調達に苦労しました(笑い)。そこで、ごぼう日本一の産地である青森県三沢市に、おいらせ事業部を03年に開設。自社体制の強みを出すため、JAおいらせさんと賃貸契約し、ごぼうの仕入れから選別作業、産地パックまでの一貫体制に取り組んで参りました。同時に長芋、にんにくの取り扱いも行っています。

高鮮度冷蔵システムを備え食品ロスを削減し歩留まりを向上

 ――秋に一斉に収穫し、翌年までの長期保存は可能なのでしょうか。

 杦山 年に一度収穫しそれを一気に出荷すると値崩れを起こし、年間を通してごぼうを安定的な価格に保つことができません。また、半年以上経過する翌年の春夏には商品劣化し、それに伴う廃棄ロスも出てしまいました。そこで埼玉県日高市に本社工場を08年に移転し、青果物を長期間貯蔵できる冷蔵設備の構築を進めてきました。場所も高速道路のインターチェンジから2km圏内に設置し、そこから国道16号や圏央道沿いにあるプロセスセンターにタイムリーに供給できる体制を構築しました。今や本社工場から関東のSMだけでなく、翌日には関西、東北のSMなどにも新鮮な青果物を納品しています。

 ――本社工場の移転で全国の得意先に営業できるようになったと。

 杦山 得意先様に新鮮な青果物を通年でご提供できるように、長期の鮮度保持にも力を入れています。17年には創業60周年記念事業として本社工場内に、念願だった第3工場となる低温冷蔵庫を竣工。この低温冷蔵庫は、鮮度保持を実現するヤマトさんの高鮮度冷蔵システムを備え、安定した温度・湿度環境を実現。長期貯蔵で商品価値も低下しません。例えば、ごぼうの保管も3カ月後で獲れた時とほぼ同じ鮮度のまま保存できます。実際に低温冷蔵庫を導入後は、得意先様に旬な状態の安全安心な青果物を年間でご提供できるようになり、当社の青果物の価値を認めていただき得意先様も順調に拡大し、商品価値に見合った価格で仕入れていただけるようになりました。また秋に収穫し、翌年の春夏まで良い状態で保管できるので廃棄ロスが大きく減り、歩留まりも向上。その結果、当社の利益、売り上げも毎年大きく伸び、40億円を超えるまでに成長しています。提携先の生産者さんも年間通じて安定した現金収入を得られます。

根菜類の長期保存から加工までの一貫体制を敷いている(上下)

 ――このコロナ禍で青果物の市場の価格変動や売り上げへの影響はありましたか。

 杦山 昨年4月、5月は緊急事態宣言発出で、SMを中心に青果物は売れました。ただ、外食産業やレストランの需要は減っており、当社が扱う根菜類もコロナ禍で先の数量受注が読みづらくなっています。また昨今の天候不順で毎年、青果の価格変動の振れ幅が大きくなっています。例えば、ごぼうの市場価格は私が経験した中で昨年が最も安く、逆に今年は最も高い。こうした状況下でも価格をなるべく平準化し、当社の防衛手段としても安定的な青果物の出荷の位置づけがさらに高まっています。過去の供給データを毎年蓄積し、秋の収穫から春夏までの年間の需要予想を立て、それに基づいた商品供給で安定した価格のご提供に努めていきます。

強みのごぼうを中心にした根菜類、カット野菜を拡大

 ――得意先への提案で力を入れていることはありますか。

 杦山 ごぼうや長芋を仲卸市場に通さないことから、仕入れでのコスト競争力をつけています。そのため私どもが取り扱う農産物は、同業他社さんに比べ、最も安く得意先様にご提供ができます。特にごぼうは、10等級ほどありますが、すべての等級を取り扱えるので、得意先様に要望に応じたごぼうも提案できるのです。青果売り場の特徴によっても、洗いごぼう、土付きごぼう、やわらか新ごぼうなどを提案できます。また、冬は熊本県、宮崎県、夏は北海道の産地も開拓し、季節に応じた旬のごぼうもご提案。それ以外にも熊本県産のにんじんなども取り扱いを広げています。ごぼうを中心に、根菜類を混載し、お買い得にまとめて納品できる体制も進めています。現在では、国産ごぼうの1t前後を当社が扱い、全国でも最大級の規模に取引量が拡大、全国のごぼうの生産者の間でもスギヤマが少しは知られるようになりました(笑い)。

 ――青果物の扱いが広がっているのですね。

 杦山 特にSMで人気が高まっているのが、カット野菜です。カット野菜は、朝までの注文でその日に加工し、翌日の早朝にSMのセンターに納品し、新鮮なカット野菜を朝一番に売り場にご提供できる体制を整えています。さらに当社の強みである青森三沢産のごぼうをパッケージ全面に入れた、パウチ惣菜のごぼうセットや、たれ付きのごぼうとにんじんのセットなど商品群も広がっています。

 ――今後の展開はどうですか。

 杦山 得意先様はセンターになるべく在庫を持たないようしていることから、質の高い青果物を長期保存するための仕組みが求められています。冷蔵技術が発達している中で、それを取り入れ、リードタイムを縮めて青果物の価値を高めていきます。

株式スギヤマ問い合わせ先

株式会社ヤマト問い合わせ先

(トップ画面は埼玉県日高市の本社工場内に竣工した低温冷蔵庫)