三菱食品は2月22日、親会社の三菱商事の京谷裕常務執行役員(59歳)が社長に就く人事を発表した。6月28日開催予定の株主総会を経て代表取締役に就任。森山透社長(66歳)は相談役に退く形となる。2011年に4社統合で発足した三菱食品の初代トップである井上彪前社長から16年6月に森山社長がバトンを受け、今回も同じく5年ぶりの社長交代となる。また京谷氏のサポート役として、三菱商事の加藤亘食品流通・物流本部長が6月に取締役に就任する。
三菱商事は主に重厚長大事業とソフト事業に分かれるが、京谷氏は三菱商事の垣内威彦社長と同じくソフト事業出身で油脂や農産物の調達部門が長い。20代、30代から米国や欧州、東南アジアを歴任して海外経験も豊富だ。14年に生活原料本部長、16年に生活産業グループCEO、19年からはコンシューマー産業グループCEOを歴任。同じく三菱商事の子会社のローソンの取締役にも就いており、食品業界の川上に精通している。ただし、メーカー関係者の声からは、ローソンの商品・物流本部長を歴任した森山社長に比べ、今まで接点がなかったという。
京谷氏は、三菱商事とローソンの購買データを使った活用や在庫管理の連携も深め、三菱食品も連携した物流効率化や食品メーカーとの商品開発なども推進していくと見られる。実際、19年12月のKDDIとローソンの資本業務提携発表会では、ローソンの竹増貞信社長とともに、三菱商事の代表として京谷氏が発表。三菱商事グループのロイヤリティマーケティングが運営する共通ポイント「ポンタ」を活用し、スマホ決済を使って消費者との接点拡大を掲げている。
さらに取引先のメーカー、卸、小売店の間で分断された商品コードを統合し、食品流通全体の効率化を推し進めていく。三菱商事がグループ傘下企業や異業種との連携を深める中で、食品卸最大手のトップとして京谷氏の手腕が早速問われそうだ。