災いを招いた馬雲氏の発言
昨年11月2日、中国証券監督管理委員会、中国人民銀行(中央銀行)などは、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏と同社傘下の金融会社「蟻科技(アント・グループ、以下アント)」の上級幹部に対して「監督管理上の聴取」を行った。これを受けて、アントは11月5日に予定されていた上海証券取引所と香港証券取引所での新規株式公開(IPO)を延期すると発表した。
報道によれば、同グループが予定していたIPOでの調達額は計345億ドル(約3兆6000億円)と見込まれていた。それが実現すれば、2019年のサウジアラビア王国の国有石油会社・サウジアラムコの294億ドルを上回り、史上最高となるはずだった。
上場延期により、アナリストが同社のIPO前の評価額2800億ドルが半減する可能性を指摘し、投資家の間では衝撃が走った。また、アリババの株価は暴落し、馬雲の財産もその後の2カ月間で120億ドルが蒸発した。この災いを招いたのは、アントの経営権を握っている馬雲氏が中国の金融体制と政府の金融政策を批判したためだとされている。