「きざみシリーズ」に要望が多かったバジルとレモンを追加
エスビー食品が、社会環境の大きな変化に伴う新たなニーズに対応した価値提案を一層強化する。2020年秋冬商品では、新商品22アイテム、リフレッシュ品16アイテムの合計38アイテムをラインアップ。売り上げ合計目標は発売後1年間(小売りベース)で78億円を掲げている。
この秋冬期「いち押し商品」の一つ目がチューブ入り香辛料「きざみシリーズ」だ。2017年に「きざみパクチー」を発売して以来、刻む手間を解消する利便性が支持されてきた。今回「きざみ青じそ」、「お徳用きざみ青じそ」は化学調味料無添加に、「きざみねぎ塩」はごま油と黒こしょうを増量するなどリフレッシュを図った。これまで商品化の要望が多く寄せられていた洋風素材の「バジル」と「レモン」を新たに追加。バジルは、刻んだバジルの華やかな香りと清涼感を表現したジェノベーゼ風の味わいに仕上げ、カプレーゼやパスタへの使用を提案。レモンは皮まで刻んだ丸ごとレモンのおいしさを楽しめる。使い方提案としてレモンスカッシュやサラダのドレッシングを紹介する。「お徳用きざみ青じそ」を除く各商品のパッケージ側面には8種類のメニューを掲載し、チューブ入り香辛料の市場活性化を図る。
過去最高シェアを獲得した10年目を迎える「濃いシチュー」
「いち押し商品」二つ目が今年で発売10年目を迎える即席ルウの「濃いシチュー」シリーズだ。同シリーズの「クリーム」と「ビーフ」、期間限定商品「ラクレットチーズ」と「きのこバター」をリフレッシュする。昨シーズン、シチューの最需要期である9月以降は暖冬が主要因で市場全体が縮小する中、濃いシチューは、パッケージ裏面でホットプレートや多様な食材を活用したシーンやメニューの提案を実施。「ラクレットチーズ」と「きのこバター」では、購入者の30%以上が裏面のメニューを利用したことで、シチュールウの利用場面が拡大し、過去最高のシェアにつながった。
今年度は新たに、「定番」や「時短」、「ホットプレート」など10種の食シーンを提案。さらに催事に合わせた究極レシピとして、大人向けには骨付き肉と野菜の旨みたっぷりのスープと白ワインを加えて作る「骨付き肉と野菜のおもてなしシチュー」と、子ども向けにたっぷりの牛乳を加え、濃厚な味わいを楽しめる「キラキラにんじんのミルクたっぷりシチュー」を紹介していく。濃いシチューだからこそできる新スタイルシチューの提案で多様なニーズや生活の変化に対応し、ブランド育成につなげる。
「いち押し商品」三つ目が新商品の「栗原はるみのクリームシチュー」だ。料理研究家の栗原はるみさん自家製の濃厚なチキンブイヨンを再現。鶏がらに丸鶏やもみじ(鶏の足)、香味野菜をじっくり煮込み、国産バターのコクと風味が豊かでなめらかなホワイトソースを合わせた。併せて鶏肉の臭みをローレルとセロリーシードで抑え、ソース全体のバランスを整えている。さらに化学調味料無添加により素材の味わいを最大限に引き出し、手作りのおいしさを楽しめるのが特徴だ。
さらに、さっと溶ける新タイプのパウダーシチュールウを採用し、商品仕様は使いやすい4皿分×2袋入り。パッケージ裏面には、きのこのクリームパスタやカリフラワーのクリームスープなどアレンジレシピを掲載。40~50代から支持を集めている栗原さんは、SNSによる情報発信を始めたことで30代以下の認知度も高まっていることもあり、幅広い層に向けて手作りする楽しさを訴求していく考えだ。
ご当地の味を再現した「町中華」シリーズ
四つ目の「いち押し商品」として、昭和の古き良き時代から続く、昔ながらの大衆的な中華料理店、そのような町中華の名店の味を再現した中華調味料「町中華」シリーズを強化する。ライターやカメラマンなどで結成された愛好家グループ「町中華探検隊」が監修した町中華シリーズは、これまで東京都内の名店の味を展開していたが、今回新たに愛知県名古屋市の「八剱ROCK人生餃子」の「台湾もやし炒めの素」と、埼玉県上尾市の「娘娘(にゃんにゃん)」の「ピリ辛肉あんかけ飯の素」を発売。台湾もやし炒めは、看板メニューである汁なし台湾ラーメン「皿台湾」の具材部分を商品化。ピリ辛肉あんかけ飯は、名物メニューであるスタミナラーメンのあんを白飯にカレーのように盛り付けた「スタカレー」を再現している。内食需要の拡大に対し、「ご当地の味」の提案でブランド育成を図る。
厳選されたレシピを商品化した「レッチャ!大賞シーズニング」
内食需要が高まる中、時短・簡便のニーズに応えたシーズニングも拡充している。エスビー食品は昨年、アイデアレシピのコンテスト「レッチャ!グランプリ2019」を開催した。8372件の応募レシピの中から一流の料理人やスパイスのプロが大賞として3メニューを厳選。今回「レッチャ!大賞シーズニング」として、鶏肉とパプリカのメキシカン炒めの「ファヒータ」、クローブの香りを移したオレンジ風味のバターソースを鶏肉に絡めたマーマレード風ソテー「オレンジチキンソテー」、スパイスを効かせた南インド風の野菜炒めの「ポリヤル」の3商品を発売する。消費者のアイデアをエスビー食品が商品化した新しい切り口で、今まで作ったことがない料理への挑戦を後押しするシーズニングにより差別化を図る。
さらにフランスの美食ブランド「フォション」シリーズを刷新。フォションの購入客は香辛料に対する関心が高く、それが生鮮食品の購入にもつながることから販売店に優良顧客を誘引するブランドとして期待されている。今回、フォションブランドのこだわりである「化学調味料に頼らない味づくり」を前面に押し出すと同時に味の再構築も行っている。エスビー食品では、今後生活防衛意識の高まりから、外食を控えて家族でより良い料理を楽しみたいという意識が高まると予測しており、手軽に素敵な料理を楽しめるフォションの味わいを強化することで満足度向上を目指す。
レトルトカレーでは、直径19㎜の超粗挽き牛肉25gを使用し、肉々しいしっかりした食感の「肉旨 ビーフキーマカレー 中辛」と「同 スパイスキーマカレー 中辛」を発売。ビーフキーマカレーには直径8㎜の粗挽き牛肉15g、スパイスキーマカレーには直径3.2㎜の鶏挽き肉15gも使用しており、同社同価格帯のキーマカレーと比べて最大の挽き肉構成量を実現し、自宅で専門店のようなキーマカレーを楽しめる。また簡便性では電子レンジにも対応している。重層的な食感と味わい、簡便性の高さを両立した商品の投入により、レトルトカレー市場のさらなる活性化を狙う。
中華調味料ブランドの「李錦記」では、「合わせ調味料 化学調味料無添加」を発売する。本格的な味わいへの期待に加えて、ニーズの高まりが予想される安全・安心志向に応えるもので、「四川式麻婆豆腐の素 中辛」、「回鍋肉の素」、「麻婆茄子の素」、「青椒肉絲の素」をラインアップ。化学調味料無添加への意識は、中華合わせ調味料の購入者のボリュームゾーンである40代以上で高い傾向。香辛料・素材の持つ本来の香り、辛み、際立つコク、本格的な味わいと化学調味料無添加を両立することでターゲットの需要を喚起していく。
ワンプレートで完結する時短・煮込みメニューの「とろっとワンプレートシリーズ」は「ドリアミート」をリフレッシュするほか、「クリーミーバターチキン」を追加。バターチキンは家庭で食べたいニーズがあったが辛いイメージがネックになっていた。そこで生クリームやトマトを使うことで辛さの不安を払拭してメニューの選択肢を増やし、家族全員が満足する味わいを新煮込みメニューで提案する。調理面では、煮込み時間が10分以下と短く、鶏肉もしくは挽肉と玉ねぎだけで作ることができる時短・簡便ニーズにも応えていく。
フランスナンバーワンジャムブランド「ボンヌママン」は、季節ごとに販売する期間限定商品として「レモンマーマレード」が登場。高品質の果実のみを選定したレモンを使用。レモン果汁の爽やかな香りと酸味に加え、レモン果皮のほろ苦さや食感のアクセントをバランス良く合わせている。ホットレモネードやレモンスカッシュ、ケーキの材料として使用することを提案し、汎用性の高さを訴求する。
このほか、和風香辛料シリーズ「旬の香り」の仕様を変更する。実際の流通環境に近い条件や保存試験の結果に基づき、賞味期間を「有機きざみねぎ」と「同三つ葉」は12カ月から15カ月へ、「くちなしの実」は24カ月から30カ月へ延長。「くちなしの実・けしの実カレンダー」は発注単位を20入り(20入り×3枚)から10入り(10入り×6枚)へと売り場環境を考慮した荷姿に変更し、小型店でも展開できるように改善している。
エスビー食品は内食回帰の高まりに応えたラインアップの拡充とメニュー提案を強化。新しい社会様式のユーザーニーズに応える構えだ。