「きざみ山わさび」の幅広い料理シーンへ使用提案
エスビー食品が急速に変化する消費者ニーズに対応した価値提案のさらなる強化を図る。2021年秋冬商品では、新商品51アイテム、リフレッシュ品25アイテムの合計76アイテムを発売。売り上げ合計目標は発売後1年間(小売りベース)で155億円を目指す。
この秋冬期は「いち押し商品」として7商品の注力品を掲げている。その一つ目がチューブ入り香辛料の「きざみ山わさび」だ。山わさびは、北海道を中心に栽培されているホースラディッシュのこと。きざみ山わさびは北海道産の山わさびを粗く粉砕することにより、しっかりした繊維感を追求したほか、時間をかけずに下処理することで特有の白色を保持している。道内ではご飯にのせ、醬油をかける食べ方が根付いているが、そばや納豆の薬味、チキンソテー、パスタなど幅広い料理シーンへの使用を提案する。「きざみ」シリーズは17年の「きざみパクチー」発売以来、素材を刻む手間を解消する利便性の高さが支持されていることから、きざみ山わさびの投入でチューブ入り香辛料の一段の市場活性化を図る。
いち押し商品の二つ目が食卓でお馴染みのメニューが手軽に作れる「マイレパートリーシーズニング」シリーズだ。「味しみ鶏そぼろ」「だし香るきんぴら」「ホクホクかぼちゃのうま煮」を新発売し、「青じそ鶏つくね」など9商品をリフレッシュする。
コロナ下で料理の幅を広げるべく和食を作りたいというニーズが高まっているが、和食は調理の難しさや手間がかかるというイメージがハードルとなっている。新商品は料理本などで実践されている味付けのこだわりや工夫を、調味料やスパイスを使うことで具現化し、和食への苦手意識を軽減した。いずれも身近な素材の使用と、短時間で完成する簡便調理を訴求し、内食ニーズに対する提案領域を広げていく考えだ。
中華調味料の「李錦記サムジャン(チューブ入り)」がいち押し商品の三つ目だ。コロナ下で食卓への登場頻度が上がっている焼肉だが、専門店のような味を楽しみたいというニーズに対応した。中華大豆みそと赤みそをバランスよくブレンドした濃厚なコクと奥深い旨みが特徴で、ごま、にんにく、唐辛子の豊かな風味とマイルドな辛みを楽しめる。パッケージには「サンチュ味噌」と表示して焼肉で使えることを強調し、サムジャンの家庭内への浸透を図る。
本格的な手作りニーズ対応の「S&B CRAFT STYLE」
四つ目のいち押し商品は、本格的な手作りニーズに対応したキット商品「S&B CRAFT STYLE」シリーズ。手作り鍋キットの「火鍋」はチェーン店での提供や専門店の出店など外食産業で広がりを見せているメニューだ。今回の商品は濃縮白湯スープ、麻辣油、スパイスミックスの三つをセットにし、スパイスや調味料を新たに買い揃える手間や食事後に余らせてしまう心配を解消し、本格的な味わいの火鍋を手軽に楽しめる。
また、スパイスで楽しむ手作りカレーキットとして、南インド風の「ケララカレー」、スリランカ風の「キーマカレー」、カレーのスペシャリスト「東京カリ~番長」監修のオリジナルスパイスチキンカレー「スパイスカレー」を発売する。エスビー食品はカレーキット商品を約35年にわたり提案し続けているが、今回、時代や消費者の嗜好に合わせ、さらに進化を図った。
カレーの3品は、テンパリングスパイス、炒めスパイス、カレーベース、香りスパイス、辛味スパイスなどの五つのパーツで構成され、化学調味料は無添加。調理時間は60~120分と手間をかけたこだわりのカレー作りが楽しめる仕様となっている。
発売に合わせブランドサイトを立ち上げ、具体的に作り方を紹介するほか、今後はトッピングレシピなども提案していく。
いち押し商品の五つ目が「栗原はるみのシチュー」シリーズだ。人気料理研究家の栗原はるみとの共同開発による安心感や本格感の味わいへの期待が非常に高いことから、既存の「クリームシチュー」をリフレッシュ。こだわりのチキンブイヨンと生クリームを増量し、より厚みのある味わいに仕立てた。今回、ビーフシチューをラインアップに追加。赤ワインの風味が特徴のブラウンソースに、3種の部位(牛ガラ・牛肉・牛スジ)からとったビーフブイヨンを加え、栗原家で長年作り続けてきたビーフシチューの味わいを再現した。テレビCMの放映も今秋冬に予定しており、幅広い年代に向けて手作りのおいしさを訴求する考えだ。
カレー通が認めた名店メニューを商品化した「神田カレーグランプリ」
いち押し商品六つ目として、レトルトカレーの「神田カレーグランプリ」2品を追加発売する。カレーの激戦区、東京・神田で行われる神田カレーグランプリで「神田カレーマイスター賞」を受賞した名店の味を商品化した。神田カレーマイスターとは、同グランプリ開催期間中に一定以上の店舗を訪問した人のみに与えられる称号で、彼らの投票で選ばれる同賞は優勝以上の名誉ある特別賞とも言われている。
今回、16年、17年と2年連続同賞を受賞した「ビストロべっぴん舎」監修の「カシミールビーフカレー」と、19年に同賞と準優勝をダブル受賞した「お茶の水、大勝軒」監修の「スパイシードライキーマ」を発売。カシミールカレーは香味野菜と牛脂の旨みに加え、芳醇な赤ワインのコクが特徴で、スパイシードライキーマは、豚挽き肉と香味野菜を長時間煮込んで濃縮された旨みに、中華スープのコク、スパイスの鮮烈な香りを付与している。カレー通が認めた名店のメニューを打ち出し、ブランド力向上を図る。
「予約でいっぱいの店のパスタソース」に期間限定商品をラインアップ
いち押し商品の七つ目が今年で発売20周年を迎えた落合務氏監修の「予約でいっぱいの店のパスタソース」シリーズだ。落合氏がオーナーシェフを務める東京・銀座の「ラ・ベットラ」で提供される「うにクリームソース」と、限定メニューの「本ずわい蟹のトマトソース」を22年2月までの期間限定で発売。うにクリームソースは創業当時から支持される人気メニュー。生クリームとトマトの濃厚なソースにうにを贅沢に合わせアンチョビを隠し味に加えることで、うにの風味を引き立たせた。本ずわい蟹のトマトソースはじっくりと炒めた玉ねぎとトマトをベースとしたソースに本ずわい蟹を加え、素材の旨みが凝縮したソースに仕上げている。
また「ジェノベーゼ」もリフレッシュ。バジルの葉をちぎったときのような爽やかな香りと彩りが特徴で、3種のチーズを使用し、濃厚なコクを再現している。テレビCMの放映を予定している既存品とともに、外食を楽しめない消費者のニーズに応え〝プチ贅沢〟を提案していく。
内食回帰で市場が拡大傾向にあるシチュールウの「濃いシチュー」シリーズは、20年度秋冬期に過去最高の市場金額を達成。この秋冬では、「クリーム」と「ビーフ」をリフレッシュし、さらに期間限定でスイス産ラクレットチーズを使用した「焦がしラクレットチーズ」、国産紅ずわい蟹を使用した「カニクリーム」を発売する。濃いシチューは昨年、シチューの利用場面拡大を目的にパッケージ裏面にアレンジメニューを提案したが、「ラクレットチーズ」では購入者の約半数が利用したと回答した(エスビー食品調べ)。今回はさらに強化し、クリームとビーフでは「大人が楽しむ」「子どもと食べたい」を切り口とした究極のレシピを提案、焦がしラクレットチーズとカニクリームではシチュー以外の新メニューを紹介し、利用シーンのさらなる拡大を目指す。
さらにパスタソースでは、「まぜるだけのスパゲッティソース」を強化し、「ゆず白みそ仕立て」をラインアップ。人気の高い和素材のゆずと和風パスタメニューでトレンドの白みそを掛け合わせた。またご当地味では「北海道山わさび&マヨネーズ」を追加。山わさびの爽やかな辛みと相性の良いマヨネーズをベースに鰹だしで旨みを加えている。巣ごもりで高まる簡便性と経済性のニーズに新たな提案で応える方針だ。
レトルトカレー・ハヤシのパック商材「ホテル・シェフ仕様」シリーズは、味のブラッシュアップに加え、電子レンジ対応のパウチを採用して利便性も向上。湯せんでもレンジアップでも温められるようになった。40代以下の年代ではレンジ対応品の利用意向が高まっていることから、ニーズに応えた価値向上で市場の裾野を広げ継続的な拡大を狙う。
このほか、中華調味料「李錦記」では「鶏丸ごとがらスープ」の品揃えを強化。通常品の100g、化学調味料無添加品では75gを中心に好調で、子育て世帯をはじめとして購入量が増加している。今回デザインをリフレッシュしたことに加え、大容量ニーズに対応し、通常品で200g、化学調味料無添加品で150gをラインアップに追加。選択肢を拡充し、調味料市場の拡大につなげていく。
エスビー食品はスパイス&ハーブの強みに磨きをかけつつ、簡便・即食から本格的な手作りまで多様化するニーズに対応し、市場のさらなる活性化を図る構えだ。