巣ごもり消費の需要を取り込み、オイシックス・ラ・大地が好調だ。同社の2020年3月期は、売上高が前年比14%増の710億4000万円、営業利益が同10%増の24億6000万円と、2桁の増収増益で着地した。とくに第4四半期は、新型コロナの感染防止で外出自粛が進んだことから、定期的な利用者の単価アップに加え、休眠会員の利用も拡大。その結果、コロナ発生前の予想に比べ売上高が9億円、利益が2億5000万円、それぞれ増加した。  

 同社が展開する「オイシックス」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の宅配事業はいずれもコロナの影響により需要を伸ばしたが、なかでも絶好調なのが全売り上げの半分強を占めるオイシックス事業だ。看板商品のミールキットが通常時の120%と大きく伸長した結果、第4四半期の会員当たりの月額利用額は、第3四半期に比べ3%強増加した。

 だがその一方で、需要拡大による弊害も生まれている。コロナ前から利用者が増加していたオイシックス事業では、供給体制を強化するため、現状の3倍規模の出荷キャパシティーを持つ物流センターを21年9月に神奈川県海老名市で稼働させる予定だった。しかし、その前に利用が急増したことで、需給がひっ迫。キャパオーバーも懸念されたことから、新規会員の募集を3月末から停止した。

 ただ、「既存会員の利用額増加で短期的には売り上げが拡大するが、新規会員が増えない分、長期的な売り上げの損失につながる」(高島宏平社長)ため、物流の負荷を抑えながら新規会員を獲得するための新サービス「サクッとオイシックス」を導入。4月30日に開始したこのサービスは、全取扱商品約4500のうち、時短ニーズに特化した商品を中心に商品数を約10分の1に絞り込んだもの。需要の大きい商品に品揃えを限定することで、注文の波動を抑えながら、新たな会員を増やすのが狙いだ。また、新センターが稼働するまで、神奈川県藤沢市に少SKUのサービスに特化したサテライトセンターを増設するほか、らでぃっしゅぼーやのセンターも活用して短期的な需要増に対応する。

 今期は、このほかに、農作物の調達物流をヤマト運輸に集約する「ベジネコプロジェクト」の取り組み拡大や生鮮の加工やリパックの内製化、らでぃっしゅぼーやのセンター集約などで生産性を高める。さらに、複数のサブスクリプション利用促進で収益性を向上させながら、売上高780億円(前期比10%増)、営業利益30億円(同22%増)を目指す。

(冒頭写真は「サクッとオイシックス」トップ画面)

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