日本郵便と楽天は12月24日、物流事業における戦略的提携に向けて合意した。新型コロナウイルスの拡大でECの利用が増える中、デジタル技術の活用などでより効率的な配送の仕組みを作り上げる。

 詳細は2021年3月の最終合意までに詰めるとしたが、具体的な検討項目として、両社は新会社設立を含む新たな物流プラットフォームの構築を挙げた。日本郵便は全国に広がる物流網と膨大な荷量データを有し、一方で楽天は「楽天市場」での需要予測や受注データの運用ノウハウに長ける。これらをかけ合わせ、誰が、何を、どのくらい注文するかといったデータを共有すれば、事前に配送体制が組め、物流効率の向上が見込める。

 併せてAIを活用して効率的な配送ルートを組むシステムや、消費者が配送の場所・日時を柔軟に選択できるアプリ開発も検討する。例えば、消費者が複数の荷物をまとめて受け取ったり、配送の遅れを了承した場合、楽天のポイントを付与する新サービスなども想定する。

 そのほか両社は新センターの設立や、ドローン配送などの技術開発でも協業する意向。さらに日本郵便の親会社、日本郵政の増田寛也社長は、「将来的には金融やモバイルなど物流以外の事業分野でも幅広く提携していきたい」との考えも明かした。楽天の持つキャッシュレス決済基盤は日本郵政グループとの連携でさらに強固なものとなる。逆に、携帯電話市場で後発の楽天にとって、全国に約2万4000局ある郵便局は重要な拠点となりうる。

 今回の取り組みは20年7月に楽天から持ち掛けたという。楽天は18年に「ワンデリバリー」構想を表明、独自の物流センターや配送網の整備に10年間で約2000億円を投じる計画を掲げる。自前の整備も続けるが、日本郵便と共同で物流拠点を整備することで投資効率を高めたい狙い。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、「オープンなプラットフォームの展開で持続可能な物流の仕組みを作り上げる」と意気込みを述べた。

 日本郵便にとっても配達の効率化は急務だ。巣ごもり消費の拡大により、20年4−9月の宅配便「ゆうパック」の取扱数量は前年同期に比べ21%増えた。日本郵便の衣川和秀社長は、「このペースで増加が続くと5年後には安定的な配送ができなくなる危険性がある。共通認識を持つ楽天との提携をデジタルトランスフォーメーションのチャンスと捉え、ECの持続的成長を実現していきたい」と語った。

(写真左から楽天の小森紀昭執行役員、同三木谷浩史会長兼社長、日本郵政の増田寛社長、日本郵便の衣川和秀社長)