スギ薬局は4月1日、金沢大学と共同で、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科に「社会薬物学研究講座」を開設した。
この目的は、患者本位の治療の実現だ。同社は取り組みの狙いをこう説明する。「医療の中心をなす薬物療法は、患者の診察、薬剤の処方を医師が行い、調剤や薬歴管理、服薬指導、医薬品の供給を薬剤師が行うという分業体制が確立されている。患者に対しては、医学や薬学からの観点だけでなく、社会環境を含めて患者を全人的に捉えたうえで、有効性が高く安全な薬物療法を、できるだけ簡便かつ確実に、さらに安価に届けることが重要となる。そのためには、高齢の患者を取り巻く制度、病院、診療所、薬局、介護施設あるいは医師、看護師、薬剤師、介護スタッフ、さらには患者家族で構成される社会が連携して薬物療法に関わる課題を解決していくことが求められている」。
その実現に向け、共同研究講座では、薬物療法に関わる新たな連携、ネットワークの構築、デジタル化や人工知能、ロボットの導入などについて研究を進める。
愛知県に本社を置くスギ薬局が石川県の金沢大学との連携を決めたのは、北陸エリアへの進出がきっかけだ。同社は、2017年2月に福井県に1号店を出店して北陸に進出。昨年10月には小松市に石川県初の店舗を出店、さらに今年1月には北陸の旗艦店となる店舗を含め3店舗を金沢市内に出店している。こうした事業展開を進める中で、「金沢大学が当社と同様のビジョンを持つことを知り、共同研究講座を開設することとなった」(スギホールディングス・広報室)という。
スギ薬局では、この共同研究が同社グループが取り組む「トータルヘルスケア戦略」の推進にも貢献すると期待を寄せている。
「トータルヘルスケア戦略」を構成する三つの柱は、様々な健康関連の施設と連携して地域の健康を支える「リアル拠点ネットワーク」、販売やサービスで蓄積されたデータの「デジタル活用」、健康なまちづくりに向けた自治体との「包括協定」で、今回の共同研究講座には、これらの3つの要素のすべてが含まれているためだ。
スギ薬局と大学との連携は名古屋大学との取り組みに次ぐ2件目となる。名古屋大学との取り組みでは昨年11月、名古屋大学病院(愛知県名古屋市)の敷地内に調剤薬局を開設。病院との綿密な関係を軸に地域医療を進める「かかりつけ薬局」を目指すというものだ。
スギ薬局では、「大学との連携は、トータルヘルスケア戦略の推進に加え、現在手掛けている新規事業の拡大など、当社の成長にプラスになり、地域社会への貢献にもつながる」(広報室)として、これら2校以外の大学とも連携を進める方針だ。
(冒頭写真 スギ薬局は北陸での展開に力を入れており、金沢大学との連携に期待を寄せている<写真は北陸旗艦店の石川県庁店>)