キリン堂ホールディングス(HD)がMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣が参加する買収)で株式の非公開化を目指すと発表した。

 米国投資ファンドのベインキャピタルが設立し、キリン堂HDの寺西忠幸会長や寺西豊彦社長ら創業家が出資する特定目的会社(SPC)のBCJ-48が既存株主から約85%の株を取得して完全子会社化する形で実施する。買い付け価格は、1株当たり3500円で、買収額は340億円ほどになる見通しだ。

 買収後の株式は、ベインキャピタルが60%、創業家が40%を取得し、現経営陣のうち、会長と社長は引き続き経営に参画し、ベインキャピタルから4名の取締役を迎える予定。なお、SPCへの創業家の出資者には、寺西会長、寺西社長のほか、寺西社長の子息で、今年7月、事業会社キリン堂の取締役に就任した寺西廣行デジタルマーケティング戦略推進室長の名前もある。創業家は新キリン堂HDの経営陣3名の指名権を持つため、寺西廣行氏がここに加わるか注目されそうだ。

 従業員については、現状通りの雇用を維持する予定で、今後は、ストックオプション・業績連動型報酬の採用など、企業価値の向上が役職員の処遇の向上につながる人事施策の導入を検討していく構え。

 今回の株式の非公開化については、今年6月上旬にベインキャピタルと寺西会長、寺西社長が社内でその意向を表明。これに基づいて協議を重ね、今回の結論に至った。

 キリン堂HDの2020年2月期の売上高は1332億7900万円で、ドラッグストア業界では12番目。だが、売上高8000億円を超えるトップ2社には大きく水をあけられ、10位のクスリのアオキHDと比べても半分以下。来年度には、マツモトキヨシHDとココカラファインの統合で1兆円企業の登場も見込まれる中、このままでは水面下に沈み込みかねない。株式を非公開化することで思い切った投資ができ、競争力も高められると判断、今回の結論に至った。

 なお、このタイミングで非公開化を決めたのは、コロナで足元の状況はよくなっており、余力があるうちに対応しようとの判断からだという。今後は、IT投資、不採算店舗の閉店、大型改装などに力を入れる予定。また、ニチイ学館など、ベインキャピタルの持つネットワークも活用して競争力強化に取り組む意向だ。

 ベインキャピタルは、米国の投資会社で、国内では、ニチイ学館、東芝メモリ、すかいらーく、ドミノ・ピザジャパン、雪国まいたけなどに出資した実績を持つ。ベインキャピタルとキリン堂HDでは、企業価値を高めた上で再上場を目指す計画だ。

(冒頭写真はキリン堂店舗)