ブランド再構築で戦略は次のフェーズへ
「ともに快適、ずっと幸せ。」
エステーが、発売25周年を迎えた猫用システムトイレ「ニャンとも清潔トイレ」に新たに掲げたブランドメッセージだ。同社ペットケア事業部の浅野貴之事業部長は、メッセージに込めた思いを「猫ちゃんが幸せなのはもちろん大事ですが、使っていただく飼育者さんが快適であることが、猫ちゃんの幸せにもつながると考えています」と説明する。2001年の発売以来大切にしてきた「猫ちゃん想い設計」を受け継ぎながら、猫とともに暮らす飼育者の快適さと、より豊かで清潔な暮らしの実現へとブランドの価値を広げた。
8月27日からはブランドロゴを刷新し、「脱臭・抗菌シート」と「脱臭・抗菌チップ」のパッケージを順次切り替えている。ブランドカラーのオレンジを前面に押し出し、店頭での視認性も高めた。上部で猫と飼育者のあたたかな関係を、下部で消臭性能などの商品特徴を訴求する。
今回の刷新は、24年6月に花王からブランドを譲り受けて以降、進めてきた事業基盤の再構築の節目でもある。譲受後は既存ユーザーのこだわりや愛着を踏まえ、ブランドの価値や強みを改めて整理してきた。商品、パッケージ、プロモーションを一体で組み直し、ブランドメッセージも刷新した。ここからは、エステー流の成長戦略が前面に出る。浅野氏はこれを「『ニャンとも』がさらに拡大していくためのフェーズ」と位置付ける。

事業を押し上げる余力は、まだ大きい。26年3月期のペットケア事業の売上高は、前年比5.1%増の37億7800万円。国内シェアも24年の10.0%から25年には17.1%へ上昇した。25年の猫用ペットケア市場は、17年比約60%増の157億円に拡大※する一方、「ニャンとも」はペット専門店などオフライン販路の開拓が進展途上にある。さらに、エステーが長年培ってきた消臭技術も成長に生かせる。こうした成長機会を取り込むため、25周年の刷新を次の成長の起点に据える。
※出典:株式会社インテージSRI+「推計販売規模」「マーケットシェア」(いずれも金額ベース)「ペットケア」(猫用:システムトイレ、猫の砂、防臭シート)1月~12月(1年間累計)市場の定義はエステー独自設定
商品面では、3月に複数猫飼育者向けの専用チップを投入し、9月にはシートの24枚入り大容量タイプと香り付きタイプを追加した。「一つ一つ、お客様が求めるものを大事に作り、ラインアップを広げていきたい」と浅野氏は話す。
さらに、「消臭力」監修の猫のウンチ・オシッコ専用消臭剤を発売。研究開発面では、東京農工大学との共同研究を通じ、空間に漂うネコ尿臭に有効な消臭剤に関する特許も取得した。「ニャンとも」が培ってきたブランド資産に、エステーのニオイ研究の知見を重ね、独自性を高めていく。
もう一つの焦点が、飼育者との接点づくりだ。システムトイレは、トイレ本体の普及が専用チップやシートの継続購入につながる。そこで「新規獲得」「他ブランドからのスイッチ」「ロイヤル化」の3段階で顧客を捉える。保護団体やブリーダー、動物病院など、猫を迎える段階で商品との接点を増やし、購入後はインスタグラムなどのSNSを通じてブランド独自の情報を継続的に発信し、ファンづくりを進める。「ファンを増やすには、やはり飼育者との接点が大事」と浅野氏は強調する。
外部連携を広げペットウェルネス社会を実現
エステーが狙うのは、ペットケア事業そのものを拡張し、「ペットウェルネス社会」の実現につなげることだ。同社が描くのは、ペットを家族の一員として、生涯にわたって健康で幸せに暮らせる環境を整え、人もペットとの暮らしから幸せを得られる社会だ。商品による暮らしの支援に加え、ペットにまつわる社会課題にも向き合う。
その方向性を象徴する商品の一つが「おしっこチェックキット」だ。専用トレーで猫の尿を採取し、チェッカー内のビーズの浮き沈みによって尿の濃度(尿比重)を確認するほか、尿の量や色も自宅でチェックできる。猫のおしっこの変化に気付くきっかけを日常のトイレに組み込む商品だ。
浅野氏は、こうした習慣を普及させることに意義があるとみる。また動物病院を通じた啓発にも取り組んでおり、「おしっこチェックを普及させていくことが、ペットウェルネス社会の実現には大事だと考えています。この商品はこれからも供給を続けます」と強調する。トイレを排泄物を処理する道具にとどめず、日々の排泄から健康を見守る接点へ広げようとしている。

ペットウェルネス社会の実現を見据え、外部企業との連携による事業領域の拡大も進める。6月には、シルクタンパク質の独自技術を生かしたペットフードやサプリメントを手掛けるNEXT NEW WORLD社に出資。7月には、体重や尿量、尿回数などを自動記録する猫用スマートトイレ「トレッタ」を展開するトレッタキャッツ社を100%子会社化した。トイレ用品を起点に、健康管理、データ活用、フードへと事業の射程を広げる布石だ。
「スピードを持って拡大するには、出資やM&Aも含め、既成概念にとらわれないやり方が必要です」と浅野氏は話す。自前主義にこだわらず、外部の技術や知見を取り込みながら事業を育てる考えだ。同時に、23年から「保護ネコ応援プロジェクト」を続け、保護猫団体への商品寄贈などにも取り組む。「ペットウェルネス社会の実現は1社ではできない」(浅野氏)ことから、メーカー、流通、動物病院、研究機関などとの連携を重視し、共通する社会課題では企業の垣根を越えた協調を進め、ペットウェルネス社会の実現を後押ししていく。
26年8月に創立80周年を迎えたエステーは、100年企業を見据え、新企業スローガン「つぎ、なにつくろう」を掲げた。従来の日用品の枠にとどまらず、新たな商品やサービス、事業を生み出していく。その変革を先導する重要な事業の一つが「ペットケア」だ。25周年を機に新たなフェーズに入った「ニャンとも」は、ブランド自身の成長とともに、エステーの次の成長を切り開く役割も担っている。

















