英スーパー大手2位のセインズベリーは7月31日、傘下の総合小売アルゴスを、新設投資会社スウィフト・パートナーズ(以下スウィフト)へ売却することで合意したと発表した。現金対価は最低1億2000万ポンド。うち少なくとも7000万ポンドを2027年2月見込みの取引完了時に、残る5000万ポンドを完了後3年間で受け取る。セインズベリーは、この売却によって中核の食品事業に経営資源を集中させ、利益率と成長率、フリーキャッシュフローの創出力がより高い簡素な事業構造を築く、としている。取引完了は27年2月、事業の完全分離は29年2月までを見込んでいる。

 アルゴスは、かつて分厚いカタログと高街地の店舗で知られた英国の老舗総合小売である。セインズベリーは16年、アルゴスの親会社ホーム・リテール・グループを約14億ポンドで取得し、以来、売り上げの約8割がオンライン起点となるマルチチャネル企業へと転換させてきた。全英1100超の受け取り拠点を持ち、英国の郵便番号地域の9割超で当日配送に対応する。活動顧客は2000万人に上る。

 もっとも、近年のアルゴスは、テムなどの海外オンライン勢の台頭に押され、業績の重荷となっていた。報道によれば、同社は25年3月期に2億2320万ポンドの税引前損失を計上し、多数の高街地店舗を閉鎖してきた(ヤフー・ファイナンス、グランド・ピナクル・トリビューン)。今回の売却額は16年の取得額のおよそ10分の1にとどまり、この安値は、テムなどが英国の総合小売市場をいかに一変させたかを映すものだと指摘されている(ブルームバーグ)。セインズベリーは今回の取引に伴い、約3億5000万ポンドの非現金の減損を計上する見込みだとしている。

 売却先のスウィフトは、この買収のために新たに設立された会社で、主要株主はリチャード・ペニークック、トレバー・ストレイン、マット・トルーマンの3氏と、トルーマン氏が共同創業した小売専門の投資・助言会社トゥルー・キャピタルである。ペニークック、ストレイン両氏は、テスコ、コープ、モリソンズ、ハウデンズ、RACなど、英国の大手小売の要職を通算35年超にわたり務めてきた。トルーマン氏は、技術、デジタル革新、AI変革の分野に強みを持つトゥルー・キャピタルの会長兼共同創業者だ。ペニークック氏は執行会長として週3日を同社に充て、ストレイン、トルーマン両氏はアルゴスの取締役として、既存の経営陣とともに事業に当たる。

 セインズベリーのサイモン・ロバーツ最高経営責任者(CEO)は「われわれはアルゴスを、数百万人の顧客と有能な従業員を擁する主要な多チャネル小売企業へと転換させてきた。中核の食品事業を強化する中で、アルゴスにとって最良の将来を築くには何が必要かを慎重に検討してきた」と説明。スウィフトが小売りの指導力、業務の専門性、技術力、長期の投資意欲を備えている点を挙げ、食品を事業の中心に戻し、次の成長段階へ進む意義を強調した。買い手側のペニークック氏は「信頼されるブランド、忠実な顧客、献身的な従業員というアルゴスの事業の強みに引きつけられた。投資し、これまでの歩みの上に築く現実的な機会がある」とコメントしている。今回の売却は、ロバーツCEOによれば競争入札ではなく、スウィフト側からの働きかけで始まり、今年に入って初回協議を行った後、数カ月かけて詰めたものだという。昨秋に頓挫した交渉について、報道ではJD.com(京東)との売却協議が不調に終わった経緯だと伝えられている(ヤフー・ファイナンス)。