昨年、職場における熱中症対策が義務化され、工場や物流施設では暑熱環境の改善がこれまで以上に重要な経営課題となっている。しかし、大空間の工場では空調設備だけで室温を下げることは容易ではない。特に折板屋根を採用している工場などでは、屋根から伝わる熱によって室温が体温を超えることも珍しくないという。こうした課題に対し、元旦ビューティ工業が開発したのが既存工場の稼働を止めることなく施工できる「元旦エコパネルシステム」だ。

開発のきっかけは自動車工場からの相談

 年々、厳しさを増す夏の猛暑、産業界も業種を問わず、働く環境の改善を迫られている。

 「元旦エコパネルシステム」の開発の出発点は、ある自動車メーカーから寄せられた相談にあった。

 「夏場になると工場内が人間の体温以上まで上がってしまう。空調だけでは追いつかない。何とかできないか」

 自動車工場は天井が高く空間が広いため、家庭やオフィスのようにエアコンを増設すれば問題が解決するというものではない。さらに整備工場などでは建物が開放されており、そもそも空調設備を設置できないケースも多い。そこで多くの場合、スポットクーラーや冷風機でしのごうとするが、酷暑の中では限界もある。

 これは金属屋根の専業メーカーとしても、見逃せない課題だった。多くの工場で採用されている折板屋根は、山と谷を持つ形状である。つまり金属の表面積が大きく、夏場には大量の熱を蓄えてしまう。建築分野では、室内温度への影響は屋根が最も大きいと指摘されている。

 屋根から伝わる熱をどのように抑えるか。それがポイントだった。

 遮熱塗料や遮熱シートは以前から市場に存在する。しかし、塗料は経年で性能が低下しやすく、シートは耐久性に課題がある。

 そこで元旦ビューティ工業が採用したのが、屋根と遮熱パネルの間に空気層を設ける構造だった。「元旦エコパネルシステム」は、耐久性と防食作用をあわせ持つガルバリウム鋼板製の屋根材「マッタラールーフ」と、熱伝導率が極めて低いポリイソシアヌレートフォームをアルミクラフト紙面材で挟んだ厚さ50mmの高性能断熱材で構成されており、既設屋根との間に空気層を設けている。

 「弊社は以前より、空気層を取り入れた屋根システムを提案しており、スポーツ施設で音楽イベントなども開催される複合施設向け屋根・天井の設計・施工を数多く手掛けています。その経験から、断熱や遮音、吸音性能を高めるには空気層が重要であることがわかっていました」(広報部)

 その知見を応用し、折板屋根に後付けできる遮熱パネルとして製品化したのである。

工場の稼働を止めずに施工が可能

 一般的な断熱改修では、既設屋根の上に新たな屋根を施工する二重折板工法が採用される。しかし重量の問題や大掛かりな足場を組み、大規模な工事が必要となるため、操業中の工場では採用しにくい。

 一方、元旦エコパネルシステムは軽量遮熱パネルを既設屋根に取り付ける工法。太陽光パネルと同じ固定金具で、屋根に穴をあけずに簡単に取り付けられる。さらに同社独自の「バリヤネット78」を組み合わせることで大掛かりな足場を必要とせず、工場を稼働させたまま施工できる。工期も「二重折板断熱工法(足場設置含む)」と比較すると、およそ半分で済む。

 性能試験では、エコパネル表面を約70度まで加熱した条件下で、屋根裏面は最小でも37度の温度低減を確認したという。

 実際の導入事例でも効果は現れている。

 レディスアパレルのハニーズホールディングスは、福島県の物流センターの猛暑対策として元旦エコパネルシステムを導入した。まず、対策が必要な一部のエリアに設置したところ、室温が約4度低下。「体感でも明らかに涼しくなった」と評価され、その後、範囲を広げての2期工事が行われた。

 このように、部分施工が可能なため、事務所や整備エリアなど、本当に暑さ対策が必要な場所だけを効率よく改善できる点も大きな特徴といえる。

 近年は自動車工場だけでなく、物流施設、カーショップ、食品工場、さらには屋内プールなどからも問い合わせが増えている。

 猛暑が常態化する中、空調設備だけで暑さに対処する時代は終わりつつある。

 「まず屋根から熱を防ぐ」。その発想は、働く人の安全を守るだけでなく、省エネルギーや設備投資の効率化にもつながる。猛暑が常態化する時代、屋根から暑さを抑えるという発想は、これからの工場や店舗、物流施設のスタンダードになっていくのかもしれない。