部門や会社の垣根を超えた〝共創空間〟

 小林製薬は商品開発の新拠点「彩都ものづくりラボ」(大阪府箕面市)の稼働を4月より順次、開始する。同施設ではこれまで「中央研究所」(同茨木市)が担ってきた研究開発機能と、「大阪工場」(大阪市淀川区)内にあった製造本部の技術開発機能を統合し、両部門の物理的な距離を解消。さらに、社外のパートナーと協働できる「共創実験室」などを設けており、小林製薬の新たなものづくりの中核拠点として機能する。

 3月5日に現地で行われたメディア見学会では、取締役 常務執行役員 研究開発本部の松嶋雄司本部長(冒頭写真)が「設計コンセプトは『人が集まり織り成すことで〈快〉を提供し続けるラボ』。当社の強みである『あったらいいな』を連続的に形にする創造の精神や顧客志向といったマインドやDNAを継承しつつ、組織や会社の枠を超えて人・情報・知恵を集約させ、技術を進化させることで、未来の『あったらいいな』を形にしていく。彩都ものづくりラボは単なる研究所ではなく、人と人とをつなぐ共創空間として位置づけたい」と力を込めた。

外壁には製造時のCO2排出量を約6割削減するECMカラーコンクリートを採用

 地下1階・地上5階(延床面積3万3323㎡)の建物の中心となる3階に執務エリアを構え、研究開発本部・製造本部・品質安全保証本部の計800名が同一フロアに集う(最大収容人数1400人)。ABW(仕事の内容に合わせて働く場所を自由に選択する働き方)を導入し、座席はフリーアドレスのほか、集中ブースや壁一面のガラスに自由に書き込めるアイデアルームといった多様な空間を用意した。社員が働きやすい環境を構築することで部門の垣根を超えたコミュニケーションを生み出し、技術交流やアイデア創出につなげる狙いだ。

施設の中心となる3階の執務エリア
5階の実験室エリア

 他の階には部門横断で利用できる大型の一般実験エリアを設置しており、中でも2階には企業や大学、研究機関など社外の多様なパートナーと一緒に試作が可能な共創実験室「つくるうむ」を設けた。これは2021年秋に発売した「ナイトミン耳ほぐタイム」の開発担当者の声から生まれた設備で、同商品では製造委託先の企業との試作品現物の共有に時間がかかったり、細かなニュアンスを伝えたりするのに苦労した経緯がある。そのため、小林製薬では今後の商品開発において共創できる空間がより重要になると考え、社外パートナーと実際に試作品を触りながら開発や意見交換を行える場を設けた。ここでオープンイノベーションを推進し、商品開発のクオリティやスピードの向上にもつなげる考えだ。

2階の共創実験室「つくるうむ」でオープンイノベーションを推進する

 また、彩都ものづくりラボでは専門性の強化とDXにも力を入れる。旧施設から実験エリアを大幅に拡充し、「芳香消臭剤評価実験室」や「カイロ測温室」をはじめ、生薬の最適な栽培方法を研究する「生薬農園」などを新たに導入した。さらに、実験機器のネットワーク化や分析の自動化などのDXを駆使した開発環境を構築し、品質管理レベルの向上と業務効率化を推進する。

 このプロジェクトが本格始動したのは19年だが、24年の紅麹問題を受けて当初の計画に一部変更も施した。松嶋本部長は「より精度の高い分析ができるように分析機器を拡充した。これからも現場・現物・現実の三現主義を徹底し、堅実にものづくりに励んでいきたい」と強調する。

 今後は米国と中国で販売される商品を除き、同社グループの全商品が同施設で開発される予定だ。小林製薬の彩都ものづくりラボは新たな価値創造と安心安全の拠点として、その機能を最大限に発揮していく。(本誌・小島知之)