米小売最大手のウォルマートは、グーグルの人工知能(AI)モデル「ジェミニ」を活用し、ショッピング体験を根本から変革する新たな取り組みを発表した。消費者がジェミニと会話をしながら商品を見つけ、そのまま注文・配送手配までを完了できる「エージェント主導型コマース」を実現する。

インスピレーションから購入まで「会話」で完結

 本取り組みの最大の特徴は、消費者が日常的に利用するジェミニのインターフェース内で、ウォルマートおよびサムズクラブの膨大な商品群が直接提案される点にある。

 従来のオンラインショッピングでは、検索サイトで商品を調べた後、各小売企業のアプリやウェブサイトに移動して購入手続きを行う必要があった。しかし、新たな体験ではジェミニが「キャンプの準備をしたい」といった消費者の意図(インスピレーション)を汲み取り、適切な商品を提示。アカウント連携をしていれば、過去の購入履歴に基づいたパーソナライズ提案や、会員特典の適用もチャット上で行われる。

 このシームレスな体験を支える技術基盤が、グーグルが提唱する新規格「ユニバーサル・コマース・プロトコル」だ。これはAIエージェントと小売業者のシステムを繋ぐオープンな標準プロトコルであり、ウォルマートも開発パートナーとして名を連ねている。

 このプロトコルの採用により、消費者はジェミニを離れることなく、ウォルマートの信頼された決済環境で取引を完結できる。さらに、ウォルマートが誇る強力な物流網を活用し、店舗在庫の商品を最短30分、遅くとも3時間以内に配送するクイックコマース機能も統合される。

小売業の「次なる進化」への布石

 ウォルマートU.S.(米国)の社長兼最高経営責任者(CEO)で、次期ウォルマート全体のCEOに指名されているジョン・ファーナー氏は、この変化を「従来の検索からエージェント主導のコマースへの移行であり、小売業における次なる大きな進化」と位置づけている。

特徴従来のネット通販エージェント主導型コマース
起点の行動キーワード検索AIとの自然な会話
アプリの移動検索から通販サイトへ遷移AIチャット内で完結
パーソナライズ閲覧履歴に基づく広告会話の文脈と購買履歴の融合
完了までの速さサイト毎のログインが必要共通プロトコルによる即時決済

 本サービスはまず米国で展開を開始し、順次グローバル市場へと拡大する予定だ。消費者の購買行動が「検索」から「AIとの対話」へとシフトする中、ウォルマートはテクノロジー企業との深化した提携を通じて、次世代のオムニチャネル戦略を加速させる構えだ。